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仮面城 [読書・ミステリ]


仮面城 「金田一耕助」シリーズ (角川文庫)

仮面城 「金田一耕助」シリーズ (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/08/24

評価:★★☆


 横溝正史・復刊シリーズ、ジュブナイルものの一冊。
 表題作である中編1作に加え、短編3作を収録。


「仮面城」

 小学6年生の竹田文彦は、TVの "尋ね人" コーナーで、自分を探す者がいることを知って驚く。探しているのは大野健蔵という人物。彼に会うべく世田谷の成城へでかける文彦。
 しかし辿り着いた屋敷で見つけたのは、頭を負傷した健蔵と、彼の娘・香代子だった。健蔵は小箱を託し、今度は自分から会いに行くという。

 文彦が家に帰ると、なんとそこには金田一耕助が。TVを見て不審に思ったのだという。

 うーん、TVでは文彦の住所までは云ってないはず(住所を知ってれば、そもそも "尋ね人" コーナーを利用しない)。金田一耕助が独力で文彦の家を探し出したのか、お母さんの方から依頼があったのか。まあ、後者だろうなぁ。

 あらためて金田一とともに成城の健蔵宅へ向かう文彦。その途中、なんと西洋甲冑が歩いている姿を目撃する。それは健蔵の家に飾ってあったものだった。甲冑は野原で姿を消す。そこに行った二人は古井戸を発見、そこを調べると、横穴があって健蔵宅へつながっていた。
 そして甲冑の中には、文彦と同年代の少年・三太が入っていた。彼は上野で靴磨きをしていたが、怪しげな老婆によって "銀仮面の城" へ連れて行かれた。そこは世にも恐ろしいところだという・・・

 物語は、健蔵と文彦の父が開発した「人造ダイヤ製造法」を狙う怪盗・銀仮面の一味と金田一耕助の対決が描かれていく。ジュブナイル作品ではおなじみの一人二役もきっちり描かれ、さて銀仮面の正体は? となる。
 終盤では伊豆の山中における大活劇まで盛り込まれ、サービス満点の冒険篇。このへんの展開はまさに "秘密基地を巡る攻防戦" で、昭和の特撮ドラマを彷彿とさせる雰囲気。なんとも懐かしかったね。

 ちなみに、wikiによると人工ダイヤの合成が実用化されたのが1950年代の前半だったらしいので、まさに本作が書かれた頃。横溝正史はそういう最新の海外ニュースにも、ちゃんとアンテナをたててたのだろう。


「悪魔の画像」

 良平少年の叔父・清水欣三(きんぞう)は売り出し中の小説家。ある日、古道具屋で一枚の絵を買う。それはやたらを赤い色を用いた不気味な絵で、自殺した画家・杉勝之助(すぎ・かつのすけ)の作品だった。
 しかしその絵を高価で譲ってほしいという者が現れる。欣三が断ると、捨て台詞を遺して去っていった。

 一方、欣三の執筆活動の助手を務めている森美也子(もり・みやこ)は、杉の絵だと聞くと真っ青になってしまった。彼女とその家族は、杉に対して何らかの恨みを抱えているらしい・・・

 探偵役を務める欣三が真相を突き止め、最後は万事丸く収まる。いちばん得をしたのは、後半で登場する美少女とお近づきになれた良平くんかも知れないが(笑)。

 ちなみに長編『八つ墓村』にも「森美也子」という女性は登場するけど、もちろん別人。どちらも才色兼備だが、性格はかなり違うみたいだ。
 ちなみに『犬神家の一族』のヒロイン「珠世」と同名の女性も他の作品に出てたような記憶が(当たり前だがこちらも別人だ)。どちらも作者の好みの名前なのかも知れない。


「ビーナスの星」
 横溝のジュブナイルものでは準レギュラーとも云える新聞記者・三津木俊助が学生だった頃の話。
 夜の11時過ぎ、国電(JRの前身)に乗っていたK大生の俊助は、15歳ほどの少女から助けを求められる。「悪人に狙われているので、吉祥寺まで降りないで一緒にいてほしい」という。俊助は彼女を家まで送りながら、事情を聞き出す。
 瀬川由美子と名乗った少女は、発明家の兄と二人暮らし。両親は既に亡いが、おばの鮎川里子が面倒を見てくれていた。里子は有名な声楽家で海外で活動していたが、彼女もまた最近亡くなったという。
 文庫で25ページほどの作品だが、なぜ瀬川兄妹が狙われているのか、タイトルの「ビーナスの星」とは何なのか。それがラスト5ページで一挙に判明する。


「怪盗どくろ指紋」
 現場に残された独特の指紋から、"どくろ指紋" と呼ばれる怪盗が跳梁していた。
 その日、蔵前国技館で行われていたサーカス興業に、突如警官隊が乱入する。人気曲芸師・栗生道之助(くりう・みちのすけ)の指紋が、"どくろ指紋" と合致するとの密告があったのだった。
 その会場には宗像美穂子(むなかた・みほこ)の姿もあった。彼女の父で大学教授の禎助(ていすけ)の書斎には、道之助にそっくりな青年の写真が飾ってあったことから、彼の姿を見に来ていたのだ・・・
 事件を解き明かすのは、由利麟太郎と三津木俊助。由利先生は主に戦前の作品で活躍していたんだけど、久しぶりの登場かな。でも、本編開始以前からこの事件に関わってたりするなど、アドバンスがあるのはちょっとズルい気もする(笑)。



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