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伊勢佐木町探偵ブルース [読書・ミステリ]


伊勢佐木町探偵ブルース(祥伝社文庫ひ14-4)

伊勢佐木町探偵ブルース(祥伝社文庫ひ14-4)

  • 作者: 東川篤哉
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2022/07/13
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 主人公・桂木圭一(かつらぎ・けいいち)は横浜・伊勢佐木町で私立探偵を生業にしている。しかし小料理屋を営む母親が、県警本部長と再婚してしまう。そして、義理の弟となった一ノ瀬脩(いちのせ・しゅう)は伊勢佐木署の刑事だった!
 というわけで、義兄弟となったコンビが、反目しながら(笑)伊勢佐木町で起こる事件に立ち向かう連作ミステリ。


「第一話 過ちの報酬」
 クラブ『胡蝶』のホステス・高森涼子から、失踪した飼い猫探しを依頼された桂木は、助手の黛真琴(まゆずみ・まこと:ちなみに男性)とともに奔走するが、既に交通事故で死んでいたという情報を入手する。
 しかし報告を受けた涼子はクラブを辞めて失踪してしまう。桂木は涼子の足取りを追いながら、彼女の奇妙な行動の意味を探るのだが・・・
 IT時代ならではのネタかなあ。便利になりすぎるのも考えものか。世の中には知らない方が良いこともある。


「第二話 尾行の顛末」
 今回、桂木が受けた依頼は尾行。相手は上杉雅美(まさみ)という魅力的な "美女" だ。しかし実はれっきとした男性で、女装趣味があったのだ。
 "彼女" がイタリア料理店に入ったところで、依頼主である雅美の姉・麗華(れいか)に連絡、"現場" にやってきた姉と弟の間で激しい口論が始まる。
 その翌週、悪徳ジャーナリストの半田俊之が殺される。容疑者として上杉雅美が浮上するが、その日の彼は桂木とは別の探偵に尾行されていて、完璧なアリバイを持っていた・・・
 このトリックはなかなか巧みで面白い。その補強のためにITが使われているのも、「第一話」に続いて今どきらしい。


「第三話 家出の代償」
 家出人の捜索を依頼された桂木。相手は三田園拓也(みたぞの・たくや)、16歳の高校1年生だ。近所に住む母方の祖父・天馬耕一(てんま・こういち)が刺殺され、その日から行方をくらましたのだという。
 首尾良く拓也を見つけ出した桂木は、事件の夜のことを聞き出す。祖父の家には行ったが、死体には気づかなかったこと、預けておいた携帯音楽プレイヤーを持ち帰ったこと。しかしその直後、拓也は何者かに襲われてしまう・・・
 カセットテープにICプレイヤーと新旧の音楽メディアが出てきて、今回もITの進歩を取り入れたストーリーになっている。


「第四話 酷暑の証明」
 依頼者は横浜の高級ホテルを経営する若王子勝信(わかおうじ・かつのぶ)。内容は妻・美幸の浮気調査だ。尾行を始めたした桂木は、彼女が金が入ったと思しき封筒を男に渡しているところを目撃するが、相手を見失ってしまう。
 先月には、勝信の母・敏江が熱中症で死亡していた。美幸の行動はそれと関わりがあるのか? 桂木は再度、美幸を尾行するが、その途中で彼女は何者かにナイフで刺されてしまう・・・
 冒頭、若王子邸に居候している青年・木田が痔に苦しむシーンがある。しょっぱなからシモネタかぁ、って思ったがこれもしっかり伏線になってるのには畏れ入る。


 かたやしがない私立探偵、かたやエリート刑事。水と油のような二人が何の因果か義兄弟となる。時には諍いながらも、最後は協力して事件を解決に導く。
 桂木の一人称で語られるので義弟・脩の出番はあまり多くないが、話数を重ねるごとに、お互いの存在を認めあうようになっていく。
 ベタな展開ではあるが、ベタ故に安心して読み進めることができるともいえる。ユーモア・ミステリとしてもよくできているし、読んで裏切られることはないエンタメだ。



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