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怪獣男爵 [読書・冒険/サスペンス]


怪獣男爵 (角川文庫)

怪獣男爵 (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/11/22
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 希代の大悪人・古柳男爵は、その悪行のために死刑となる。しかし新たな肉体を得て甦り、復讐と宝石強奪を企む。
 横溝正史・復刊シリーズ、ジュブナイルものの一編。


 古柳冬彦は、世界でも指折りの脳生理学者だった。しかし希代の悪人でもあった。兄・夏彦を殺害して財産と男爵位を乗っ取り、瀬戸内海の孤島・男爵島を根拠地に犯罪に手を染めていた。しかし物理学者・小山田博士の活躍で逮捕され、死刑となってしまう。

 ところが古柳男爵は生前にトンデモナイ技術を完成させていた。人間の脳を他人の体に移植するものだ。古柳男爵の遺体は彼の助手である北島博士に引き取られて、男爵島で密かに手術が行われた。

 男爵の脳は、サーカスから密かに買い取っておいた "ロロ" という生き物の体に移植される。ロロはゴリラのような体を持つが、ところどころ人間ぽい特徴も併せ持つ不思議な生物だった(ロロの正体は終盤で明らかになる)。

 こうして古柳男爵は、屈強な肉体と大悪人の脳髄を併せ持つ怪物・"怪獣男爵" として甦り、自分を死刑に追いやった小山田博士への復讐、そして億万長者・五十嵐宝作からの財宝奪取をはじめ、数々の凶悪犯罪を開始する。

 男爵と対決するのは小山田博士と等々力警部なのだが、ジュブナイル故に3人の若者・少年がメインとなる。
 小山田博士の息子で15歳の史郎、宇佐美恭助は柔道三段の大学生、太一は12歳ほどの少年だ。恭助と太一は両親が亡く、小山田博士が引き取って養育している。

 この3人が瀬戸内海でヨットクルーズをしているとき、突然の嵐に見舞われて男爵島に逃げ込むところから本編は始まる。
 彼らはそこで瀕死の状態の北島博士を発見、怪獣男爵誕生の経緯を知る。しかし時既に遅く、男爵は島を脱出してしまっていた・・・


 江戸川乱歩の場合は、いろんな正体不明な敵が登場しても、たいていは二十面相の変装だったりするのだが、本書に登場する怪獣男爵は完全に "人外"、あるいは "人間以上" の怪物だ。

 もっとも、これでは人間の間に入り込んで悪さをすることはできないから、3人の人間の手下を従えている。3人とも共通して "いかにも悪そう"(笑)な外見をしているのは、ジュブナイル故のご愛敬だろう。
 この "怪獣男爵の一味" vs "史郎たち3人組" の対決が全編にわたって描かれていく。


 実は本書、私はけっこう早い時期に読んでいる。小学校4年のときに父親が江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズを買い与えてくれたことが私の読書人生の始まりだった、てのはこのブログのあちこちで書いてる。
 乱歩に熱中していた息子を見ていた父は、たぶん私を喜ばせようと思って本書を買ってきてくれたのだろう。
 ただ、私は『怪獣男爵』の設定の不気味さに圧倒されてしまって、面白さよりは恐怖を感じてしまったのを覚えている。実際、父はこれ以外の横溝ジュブナイルは買ってくれなかったので、多分顔に出ていたのだろう(笑)。

 思えばこれが私の "初横溝"(笑)だったんだね。今まで、中学生の頃に読んだマンガ版『八つ墓村』(作画:影丸譲也)が最初だと思ってたんだが、すっかり忘れていたよ。怖すぎて記憶の底に封印されていたのかも知れない(笑)。



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