世界の果ての夏 [読書・SF]
評価:★★☆
地球の表面に現れた、〈涯て〉と呼ばれる球状空間。そこに飲み込まれたものは再び外へ出てくることはない。
〈涯て〉は次第に大きさを増し、現在は直径300kmに達している。いくつかの国と海にまたがり、世界を侵食していた。
〈涯て〉の内側では、こちら側と異なる時間が流れているらしい。そして、生き物が食物を消化して取り込むように、〈涯て〉はこちらの世界を ”処理して取り込む” 作業をしていると考えられていた。
この ”処理” に干渉できれば、〈涯て〉の増殖を阻止できるのではないか?
そう考えた人類は、ひとつの方法に辿り着く。
物語は離島で暮らす小学生、”ぼく” の回想から始まる。そこでは、〈涯て〉から逃れて疎開してきた子どもたちが生活していた。
ある夏の日、ミウという少女が転校生としてやってきた。しばしば奇行に走るミウに振り回されながら、次第に彼女に惹かれていく ”ぼく” の心情が綴られていく。
しかしその次の章で、この部分はタキタという老人がカプセルの中で半ば眠りながら、過去の記憶を再生していたのだとわかる。
そして彼のような人間たちが、〈涯て〉の増殖を食い止める働きをしていたことも。
そしてもう一人の主役となるのが、ゲームの3Dデザイナーをしているノイ。上司のパワハラで会社を辞めた後はフリーランスで働いている。
その彼のもとに持ち込まれたのは、3Dアバターの製作の仕事。依頼者はタキタ。その内容は、かつて同級生だった少女・ミウの姿をアバター化して再現することだった・・・
第3回ハヤカワSFコンテスト佳作受賞作。
まず、私には難しかったですね(笑)。冒頭で説明される、〈涯て〉の増殖を食い止める方法からしてよく分からない(おいおい)。
〈涯て〉が ”こちらの世界” を ”処理” しているのなら、処理量を増やしてやればスピードは落ちるはず。
それなら ”こちらの世界” の ”情報量” を増やしてやればいい。
書いてみて思ったが、極めてコンピュータ的な発想にも思える。作者の本職はゲームデザイナーらしいので、そのあたりも影響してるのかも知れない。
その方法こそが、本書のSF的アイデアの中心になっているのだろう。
しかし、上に書いた文章はあくまで私の解釈なので、ひょっとしたら間違ってるかも知れない(おいおい)。
物語のキーパーソンとなるのは、もちろんミウさん。なかなか不思議な雰囲気を持つ女の子なんだが、それだけではない。物語の終盤では、意外な役回りが明らかに。
理解不能な存在である〈涯て〉のイメージに加え、ミウという少女、さらにはメインキャラたちも深く描かれている。ただ、ストーリーはやっぱりよく分からない(笑)。
この手の作品の常かも知れないが、〈涯て〉に飲み込まれること自体が悲劇や破滅とは限らない可能性も示されるし。
このラストはハッピーなのかアンハッピーなのか。さて。
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