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彼女がエスパーだったころ [読書・その他]


彼女がエスパーだったころ (講談社文庫)

彼女がエスパーだったころ (講談社文庫)

  • 作者: 宮内悠介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/04/13
  • メディア: Kindle版


評価:★★★

”スプーン曲げ” に代表されるような、科学では捉えきれない事象。
あるときは超常現象と呼ばれ、あるときは疑似科学と呼ばれる。
そういったものをテーマに書かれた連作短篇集。
SFとミステリの境界にあって、どちらでもない作品が収められている。
共通しているのは、取材記者が書いたルポという形式をとっていること。

「百匹目の火神」
S県歌島に棲む猿が火をおこす方法を覚えた。すると、距離や世代を超えて、日本各地の猿の間で火をおこす猿が現れた。
語り手は、アグニという名の猿が最初に火をおこし、仲間にそれを伝えために本州を北上していった足取りを追っていく。
タイトルは ”百匹目の猿現象” から来ている。詳しくはグーグル先生に聞いてください(えーっ)。

「彼女がエスパーだったころ」
仕事上のストレスから、”超能力” でスプーンを曲げる動画を大量にwebにアップし、エスパー界(そんなものがあるのか?)の ”ゆるキャラ” になった女性・及川千晴。
彼女自身は超能力があるともないとも明言せず、やがて超常現象への懐疑論者として知られる物理学者・秋槻義郎と結婚するが、秋槻はマンションの非常階段から墜落死してしまう・・・
本書の中ではいちばんミステリっぽいかも知れない。
秋槻義郎って、昔ユリ・ゲラーにケンカを売っていた(笑)大槻義彦・早稲田大学教授(現在は名誉教授)のもじりですか?

「ムイシュキンの脳髄」
網岡無為(あみおか・むい)。通称 ”ムイシュキン”。
思春期の頃から自身の暴力衝動のコントロールができなかった彼は、長じてそれを鎮めるためにオーギトミー手術を受けた。彼の暴力衝動は収まったかに見えたのだが・・・
オーギトミーとは、精神疾患の治療法として開発されたもので、脳にメスを入れて一部を切除することによって種々の症状を緩和させる。モデルとなったのは20世紀中頃に精神障害の治療法として多用されたロボトミー手術だろう。昔のSFにもよく登場していた記憶がある。
詳しくはグーグル先生に(えーっ)。

「水神計画」
水に「ありがとう」と声をかければ、その水は浄化される。
品川水質研究所の所長・黒木はそんな思想をもっていた。
茨城県沖に建設された海上原発<浮島>が巨大台風の直撃によって炉心溶融が発生、海水の浸入によって大量の汚染水が発生していた。
黒木は ”水の力” を以て汚染水の浄化を計画する。すなわち、コップ一杯ほどの ”種子” となる純水を原子炉内に投下すれば、すべての汚染水が浄化されると・・・ラストは意外なサスペンス展開。
「水からの伝言」が元ネタだね。詳しくはグーグル先生に(えーっ)。

「薄ければ薄いほど」
末期ガン患者などを受け入れる終末医療施設・白樺荘。
しかしここに入所した患者たちには、<量子結晶水>なるものが与えられていた。
生薬を10の60乗倍に薄めたもので、実質、生理食塩水と変わらない。
そんな施設の中で、患者たちが謎の ”自殺” を遂げていく・・・
終盤はミステリ展開。
「ホメオパシー」、そして「レメディ」が元ネタだね。詳しくはグーグル先生に(えーっ)。

「佛点」
かつての ”エスパー”・及川千晴から語り手の ”私” へと連絡が入る。
彼女の知人女性がアルコール依存症に苦しみ、ロシア人が主宰する依存症患者の相互扶助組織に入ったのだが、そこは会員たちにセックスを強要するカルト集団だった・・・
ここで登場する千晴嬢は、過去の諸々とはいろいろ吹っ切れたみたいでなかなかお茶目で活動的な、魅力あふれる女性になっている。
1997年に起こった、ヘヴンズ・ゲート事件が元ネタ。詳しくはグーグル先生に(えーっ)。


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