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竜の雨降る探偵社 [読書・ミステリ]


竜の雨降る探偵社 (PHP文芸文庫)

竜の雨降る探偵社 (PHP文芸文庫)

  • 作者: 三木 笙子
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/03/09
  • メディア: 文庫
評価:★★★

時は昭和。新宿に "雨の日だけ営業" する、変わった探偵社があった。
その主にして唯一の社員である水上櫂(かい)。
元神主という変わった経歴である。

さっぱり客は来ないが、その代わり
幼なじみの和田慎吾が相談事を持ち込んでくる。
その背後に隠された "事件" を引き出し、解決していく
櫂の活躍を描く連作ミステリ。

「第一話 竜の雨降る探偵社」
建設会社「和田技研」創業者の次男である慎吾は、
子会社をひとつ任されている。
その会社の入っているビルの1フロアの下にある「友永商事」、
その受付で働く真田温子が困っているという。
近頃、会社宛に郵便物が間違って配達されることが頻発していると。
そしてその数日後、温子は謎の失踪を遂げる。
間違って配達されることに秘められた意味は意外だが、
現在ではどうだろう。昭和の頃だから成立した話なのかも。

「第二話 沈澄池のほとり」
"沈澄池" は "ちんちょうち" と読むのだそうな。
河川から引いた水を水道水として利用する際、
いったん水をため込んで浮遊物や泥を沈殿させる池のことだ。
淀橋浄水場にある沈澄池で、若い女性が投身自殺を遂げた。
それ以来、池のほとりでじっと佇む女性が現れる。
彼女は長峰志保子と名乗り、自殺した女性の親友だったと語るが・・・
本筋と並行して、逃亡中の麻薬密売人の話が出てくる。
最終的には二つの話のつながりが暴かれるのだろうと予想は着くが
真相を暴くために櫂がとった行動がかなり突飛で、
これは最終話への伏線にもなっている。
ちなみに、現在では淀橋浄水場はなくなっていて
その跡地には高層ビルが建ち並び、「新宿新都心」と呼ばれてる。

「第三話 好条件の求人」
早稲田大学のアルバイト斡旋掲示板に掲げられた「カメラマン募集」。
破格の条件に23人もの応募者があったため採用試験が行われることに。
場所は江ノ島。しかし、参加した学生・門間博人は、
バスを借り切って一日がかりで行われた "試験" に不審なものを感じ、
慎吾と櫂に相談するのだが・・・
いやあ、"犯人" 側の意図はわかるが、それにしては
大がかりで手間がかかりすぎてコスパが悪そうだなあ。
あと、本筋に関係ないけど、名前だけだが
"当年とって70歳の人気美人画家・有村礼" が登場する。
《帝都探偵絵巻》シリーズと同一の世界とすると、
本書の物語は昭和30年代はじめあたりかな。

「第四話 月下の氷湖」
その日、水上探偵社を訪れた美女は櫂の幼なじみの渡部真澄。
慎吾を交えて3人で故郷の想い出を語り合う。
干拓によって故郷から姿を消した湖のこと、
(たぶん秋田県の八郎潟がモデルだと思う)

慎吾の父・儀平のこと、慎吾の腹違いの兄・誠吾のこと、
儀平の後妻に入り、慎吾を生んだ母・志津子のこと。
地質学の研究者にして、湖のほとりに住み着いた楠木のこと、
そして、慎吾にとって命の恩人でもあったその楠木が
最近亡くなったこと・・・
そして、慎吾の心に棘のように刺さっていた、
誠吾との間にある "わだかまり"。
その陰にあった "事情" を櫂が解き明かし、慎吾の心を癒やしていく。
さらに、最後の最後で、もうひとつ意外な事実が明かされる。
いやもうこれはミステリの範囲を超えてるんだけど
ネタバレになるので書きません。

物語はこの第四話で完結となるので、おそらく続編はないだろうけど
もうちょっと慎吾と櫂の探偵譚を読みたかった気もする。

最後に余計なことを。
本編と全く関係ないんだが、「和田慎吾」ってキャラ名をみて、
どこかにそんな名前の漫画家がいたなあ・・・
って思ったんだけど、そちらは「和田慎二」さんでしたね。
ヨーヨー持った女子高生が、なんと実は刑事だったりして、
そんでもって "桜の代紋" を振りかざして大暴れするというアレの人。

nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-11-19 00:16) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-11-19 00:17) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-11-19 00:17) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-11-20 23:58) 

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