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青い花は未来で眠る [読書・SF]


青い花は未来で眠る (角川文庫)

青い花は未来で眠る (角川文庫)

  • 作者: 乾 ルカ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/08/25

評価:★★☆


 高校2年生の優香(ゆうか)が乗り込んだ飛行機がハイジャックされ、何処とも知れぬ山中の湖に不時着を強いられる。犯人は謎の4人組。彼らによってほとんどの乗客は命を落とし、生き残ったのは優香を含めた5人だけ。犯人グループと対峙しながら、なんとか生存の道を探る優香たちだが・・・


 主人公・梅木優香は過去に "ある事件" に巻き込まれ、彼女を庇った姉を眼の前で喪ったことから、生きることに消極的になっている。

 高校2年生になった優香は、アメリカへの修学旅行に参加するが、彼女たちが乗った飛行機が謎の4人組にハイジャックされ、何処とも知れぬ(アラスカのどこかと推測される)湖に不時着を強いられる。さらに、犯人グループが散布した "何か" のせいで乗客たちは錯乱し、次々に命を落としていく。

 生き残ったのは5人。優香、会社員の白山、無職の青年・陣内、同級生の小田、そしてアメリカ人研究者エド・イウチ。

 犯人グループの標的だったのはイウチだった。犯人グループは彼のもつ「NJ」なるものに関するデータを手にいれようとしていたのだ。

 犯人グループのうち、2人は10代半ばほどの双子で、美少年といっていい容貌。後の2人は20代後半と30代前半かと思われ、常人離れした格闘能力を持っている。

 客室にいる優香たち生存者と、コクピット付近を根城にした犯人グループは、機内で対峙することになる。

 優香は空手二段の腕前を誇るのだが、そんなものは彼らには通用しなかった。そして彼女以外は、およそ戦いには不向きな者ばかり。
 しかし圧倒的な力の差で、あっという間に制圧されてしまうかと思いきや、そうはならない。犯人グループはなぜか、一定時間活動すると、その後は引き上げてしまってしばらく戦わないのだ。

 実は彼らには体調に大きな "波" が存在するのだが、その原因も彼らの行動理由の一つになっている。
 ゆえに、機内での睨み合いは長時間にわたることになる・・・


 最初は『ダイ・ハード』みたいな、生存者たちとテロリストとのサバイバル・アクションかと思ったんだが、そういう爽快さとは無縁の物語が進行する。

 空手の達人の優香がそれなりに活躍できるかと思いきや、初戦でコテンパンに痛めつけられてしまう。
 生存者の足並みも揃わない。家族の元へ帰るために生き抜くと頑張るのは白山だけで、ヤワで頼りなさそうな陣内、ポケット六法全書を持ち歩くひねくれ者の小田と、まとまりのなさは半端ない。
 要するに読者が「こうなるんじゃないか」「こうなってほしいな」という予想/願望をことごとく外しまくる展開が続くことになる。

 そして終盤近く、犯人グループが自らの出自を明らかにすることで、物語は一転する。それまでも、それっぽい描写や発言もあって「ひょっとしたら」とは思ってたが。

 文庫裏の惹句には「SFサスペンス」って銘打ってある。作中で明らかになる「NJ」なるものの設定がSF要素かと思ってたんだが、それだけではなかったということだ。

 ただ・・・ちょっと唐突かなぁ。この時点で明かされても納得できない人もいるんじゃないかなぁ。ネタバレになるから内容は書かないが、○○○○○○○してきた経緯も説明がないし。「気がついたらこうなってました」では都合が良すぎないかなぁ?
 "これ" をやりたいのだったら、物語の最初から "これ" をメインに出した展開にしても良かったんじゃないかとも思う。
 犯人グループだって殺人狂集団ではなくて、やむにやまれぬ思いからこんな事件をしでかしているわけで、その背景には充分同情の余地がある。とはいっても、無関係な人間を大量に殺戮するのは悪魔の所業だが。

 もっとも、犯人グループにスポットを当てすぎるとヒロイン・優香さんの影が薄くなってしまうかな。作者は犯人側の事情よりも、優香の "再起と成長" のほうにスポットを当てたかったのだろう。

 作品の評価は人それぞれだと思うけど、少なくとも私にとっては ”心地よい読後感” とは言い難い物語でした。



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