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かがやき荘西荻探偵局 [読書・ミステリ]


 

かがやき荘西荻探偵局(新潮文庫)

かがやき荘西荻探偵局(新潮文庫)

  • 作者: 東川篤哉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/10/18

 

評価:★★★☆

 


 西荻窪のシェアハウスに暮らすアラサーの女子3人組。家賃の支払いに困った彼女らは、探偵活動の見返りに家賃をまけてもらうことを条件に、西荻を舞台に起こる怪事件の中に飛び込んでいく。

 

 


 女子高生のコスプレを普段着(笑)とする関礼菜、怪しげな関西弁を話す占部美緒、ミステリ・オタクの小野寺葵。3人とも働いていた会社をクビになってフリーター状態。もちろん家賃を払う余裕なんてない。

 

 しかし大家さんである実業家・法界院法子(ほうかいん・のりこ)が持ち込む事件を解決することで家賃が相殺されることになる。

 ”アラサー女子探偵団” となった3人の活躍を描く連作短編シリーズだ。メインの探偵役は推理マニアの葵が務める。

 

 

「Case 1 かがやきそうな女たちと法界院家殺人事件」

 

 成瀬啓介は29歳の独身男。父が残した会社を引き継いだものの、新しい経営陣からは外されてしまう。会社と縁を切った現在は無職だ。

 遠縁の資産家・法界院法子を頼った啓介は、彼女の秘書見習いとして雇われることに。

 その最初の仕事は、彼女が所有するシェアハウスの住人から、滞納している家賃を取り立てること。そのシェアハウスで暮らしてるのが上に書いたアラサー3人組だった。

 

 しかしその矢先、法界院家の屋敷の離れで殺人事件が発生する。そこで生活していた真柴晋作という男が射殺死体となって発見されたのだ。しかも遺体は60インチの大画面テレビの下敷きになっていた。

 

 啓介からその話を聞いた3人組は、事件の真相を解明する代わりに滞納家賃を棒引きしてもらうことを申し出るのだが・・・

 

 シリーズ全体の設定説明を兼ねたエピソード。

 ユーモア・ミステリながら、終盤での葵によるトリック解明と真犯人の絞り込みのプロセスはなかなかの読み応え。

 

 


「Case 2 洗濯機は深夜に回る」

 

 深夜、シェアハウスに帰る途中の礼菜と美緒は、粗大ゴミ置き場で洗濯機を発見する。縦型一槽式の全自動、しかも去年発売されたばかりの最新式。しかも四輪のついた台車の上に載っている。これはもう「持って帰ってください」といわんばかりの状態。

 

 「これはラッキー」とシェアハウスまで運んでくる2人。ひとまず玄関先に置き、ひと寝入りしたが、異様な物音で目覚める。なんと玄関に置いた洗濯機が動いていたのだ。電源につながれ、中では雑巾が入った水がぐるぐる回っているではないか・・・

 

 なかなかインパクトのある謎が提示される。奇妙極まりないのだけど、これが意外と大きな事件につながっていき、その中でこの謎も合理的に説明される。

 

 まあでも実際、この犯人の目論見通りに使えるかとなるとちょっと疑問な気もしないでもないが、そこは許容範囲かなとも思う。

 ユーモアと本格ミステリの融合という点では本書でいちばんの作品だろう。

 


「Case 3 週末だけの秘密のミッション」

 

 法界院法子の知人である会社社長・松原清美。73歳になる彼女の父・浩太郎は母との2人暮らしだが、最近奇行に走っているらしい。

 毎週金曜の夜になると自動車で出かけて、帰ってくるのは10時過ぎ、ときには深夜になることも。父は母に隠れて浮気しているのではないか?

 

 清美から相談された法子は、3人組に調査を命じる。彼女らはさっそく浩太郎の尾行を始めるが、結果は意外なことに。

 浩太郎は家を出ると吉祥寺のマンション工事現場の横に車を駐め、そのままそこに留まり、10時を廻ると家に帰ってきた。その間、誰とも接触していない。愛人との待ち合わせではなかったのか・・・?

 

 今回は "日常の謎" 系のお話だけど、伏線は序盤から堂々と張られている。それなのに読者にそれと気づかせないのはたいしたもの。単に私がニブいだけかも知れないが(笑)。

 

 


「Case 4 委員会から来た男」

 

 コンビニでの買い物を済ませた葵が出会ったのは、立派な身なりの中年紳士。

 「西荻向上委員会副委員長・吉田啓次郎」と名乗った彼は、西荻を宣伝する新雑誌を創刊するという。それに載せる記事にするため、葵にインタビューをしたいと申し出る。

 

 吉田の醸し出す "渋い中年" の魅力に惹かれていく葵。彼が妻と死別していると聞いて思わずガッツポーズをしてしまう(笑)。2人はどんどん親密さを増していくのだが・・・

 

 「あなたは選ばれました」と言われ、思わぬ幸運に有頂天になってしまうという展開は、シャーロック・ホームズの某作品を連想させる(作中でもその作品への言及がある)。しかし、うまい話には裏があるのは世の常。

 今回はミステリというよりはサスペンス。葵に迫る危機を救うのは誰か。

 

 


 本書には続編「かがやき荘西荻探偵局2」がある。これも文庫化されていて手元にあるので近々読む予定。

 

 



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