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東京帝大叡古教授 [読書・ミステリ]


東京帝大叡古教授 (小学館文庫)

東京帝大叡古教授 (小学館文庫)

  • 作者: 門井慶喜
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2016/04/22
評価:★★★

 東京帝国大学の宇野辺叡古(うのべ・えーこ)教授は、”知の巨人” として知られる人物。しかし彼の周囲で連続殺人事件が起こる。熊本から上京してきた青年をワトソン役に、事件を解決していく教授の活躍を綴っていく。
 時代は明治38年。日露戦争を背景に、桂太郎・西園寺公望・夏目漱石・徳富蘇峰など実在の政治家、作家、ジャーナリストなどが登場して事件を彩る。
 ちなみに第153回直木賞候補作とのこと。


「第一話 図書館の死体」

 明治38年8月。熊本から上京してきた青年が、叡古教授に会うために大学の図書館にやってきたところ、死体に出くわしてしまう。遺体の主は帝大の教授だった。
 叡古教授によって殺人トリックが明かされるのだけど、これはどうだろう。明治時代ということを差し引いても、これってアリなのかなぁ。

 青年は叡古教授によって ”阿蘇藤太(あそ・とうた)” という仮名を与えられ、以後その名で通すことになる。
 「遺体発見の場に居合わせたとして、これからいろいろ言われるのは差し障りがあるだろう」という配慮からだったが、本人は不満げな様子。青年の本名は最終話で明らかになる。


「第二話 洋装の古代神話」は、13年前の明治25年に大分県の臼杵(うすき)町へ出張した叡古教授が、そこの寺に所蔵されている「聖徳太子像」という絵の真贋を鑑定する話。


「第三話 電報十四文字」では、京都駅で元帝大教授が殺害され、彼の元に届いていた一通の電報から、殺人容疑が帝大講師・夏目金之助(漱石)に降りかかる話が描かれる。


「第四話 字が書けるということ」以降は、物語の連続性が高まって、本書全体でひとつの長編になっていることが明らかになっていく。
 日露戦争が終結するも、その講和条件に反対する者たちの激しいデモが起こり、騒然とする東京の様子を背景に、今までに起こった一連の事件の実行犯と、その裏で糸を引く黒幕の存在が判明する。


「最終話 われは藤太にあらず」で黒幕の正体も明らかになるが、歴史ミステリだけに、この時代、この社会情勢ならではの解決が示される。

 本作でワトソン役を務めた ”阿蘇藤太” の本名も明らかになる。読んでいると、おそらく彼も実在の人物で、歴史上の有名人なのだろうと想像がつくが、よっぽど近現代史に詳しい人でければ正体までたどり着かないんじゃないかな。
 もちろん私も判りませんでした(笑)。たしかに歴史に名が残る人ではあったけど。



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