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短編ミステリの二百年6 [読書・ミステリ]


短編ミステリの二百年6 (創元推理文庫 M ン 7-6)

短編ミステリの二百年6 (創元推理文庫 M ン 7-6)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/12/20
  • メディア: 文庫
  短編ミステリの歴史を俯瞰するアンソロジー、全6巻の最終巻。

 本書には12編を収録。

「終(つい)のすみか」(ジョイス・ハリントン)[1979]
 主人公リリアンはニューヨークでデパート勤めをしている老婦人。夫は若い頃に亡くなり、娘が結婚してからは1人暮らし。しかし突然、勤め先から解雇を告げられ、アパートは建て替えのために立ち退きする羽目に・・・

「しがみつく女」(ルース・レンデル)[1975]
 主人公の青年は、高層アパート12階の窓にしがみついている女を発見した。彼の通報によって命を救われた女は、彼と交際を経て結婚する。仲睦まじい新婚生活だったのだが、彼女はやがて彼をことごとく束縛するように・・・

「交通違反」(ウィリアム・バンキア)[1967]
 違反をした男が捕まり、当番の警官クリアリーのもとへ連行される。男はなんとかクリアリーを買収して逃げだそうとするのだが、クリアリーは応じない。金額が次第に上がっていくのだが・・・。なんとも意外な結末。これは上手い。

「拳銃所持につき危険」(ジェフリイ・ノーマン)[1979]
 専業主婦のサンドラがレイプ被害に遭う。裁判に訴えるが、相手側の弁護士はサンドラのほうから誘惑したように陪審員に説き、無罪に。裁判を終えたサンドラは、これから護身用に拳銃の練習を始めると夫に宣言するのだが・・・

「またあの夜明けがくる」(パトリシア・ハイスミス)[1977]
 エディとローラの夫婦は4人の子持ち。自らも働いているローラは、朝から晩まで家事と仕事に追われて毎日くたくた。末っ子のフランシーがケガをしたら、ソーシャルワーカーがやってきた。児童虐待をしていると疑われて・・・

「パパの番だ」(ジェイムズ・マクルーア)[1977]
 離婚して妻子と別れたエイドリアン。今日は3人の子どもたちと会える日だ。彼はヴィッキーという女性と再婚するつもり。彼女は今日、エイドリアンに頼まれて子どもたちと一緒にピクニックに出かけることになるのだが・・・

「バードウォッチング」(デイヴィッド・ウィリアムズ)[1980]
 小学校教師のミス・ハードウィックは、子どもたちに描かせた写生画から、ある人物の不倫を知る。彼女はその男女を強請り始めるのだが、ある晩、鉄橋から飛び降り自殺を遂げてしまう・・・

「最期の叫び」(マイクル・コリンズ)[1969]
 私立探偵のダンは、ある会社のボーナス支払用現金を5日間、夜間だけ警備することに。経費をケチるために昼間は社員に警備するのだ。しかし、夜に賊が侵入して社長が負傷、ダンに仕事を依頼した弁護士が死亡してしまう・・・

「アッカーマン狩り」(ローレンス・ブロック)[1977]
 ”アッカーマン” という姓を持つ者が殺される事件が続発する。姓以外に全く共通点が見当たらない被害者たち。当然ながら、秘められた”ミッシング・リンク” があるはず、と考えるだろうが・・・

「家族の輪」(スタンリイ・エリン)[1977]
 父親が亡くなり、ハワード・ウィックスは大学を中退して家に戻ることに。全財産は母親であるウィックス夫人に残された。彼女はウィックス家の専制君主となってハワードに絶対服従を強いるのだが・・・

「ジェミニー・クリケット事件〈アメリカ版〉」
   (クリスチアナ・ブランド)[1968]
「ジェミニー・クリケット事件〈イギリス版〉」
   (クリスチアナ・ブランド)[1968]
 弁護士ジェミニーが密室で殺される。その1時間後には警官の死体も発見された。容疑はジェミニーが後見人となっていた若者たち、ジャイルズ、ルーパート、ヘレンの3人に降りかかる・・・
 〈アメリカ版〉を大幅に修正したものが〈イギリス版〉。内容の骨子は同じだが、後者の方がよりわかりやすく、真相の衝撃も大きいだろう。編者がべた褒めするだけあって、とてもよくできているミステリ。


「終(つい)のすみか」「家族の輪」は ”奇妙な味”。
「しがみつく女」「拳銃所持につき危険」「またあの夜明けがくる」「パパの番だ」「アッカーマン狩り」はサスペンスかな。「しがみつく女」はホラーに入れたい気分だが。
「交通違反」「バードウォッチング」「最期の叫び」「ジェミニー・クリケット事件〈アメリカ版〉」「ジェミニー・クリケット事件〈イギリス版〉」はミステリ。


 ここで全6巻を読了したのでまとめてみる。

 収録作は全部で71編。分類してみる(あくまで私の基準だが)と、
 ミステリ(謎解き or トリッキーなオチがメインの作品)が23編(32%)。約1/3を占めることになる。
 サスペンスおよびクライム・ストーリーが17編(24%)。
 いわゆる ”奇妙な味” が8編(11%)、ホラーが同じく8編(11編)。
 その他(分類が難しいもの、ファンタジー、パロディも含む)が15編(21%)。

 読んでるときも感じたが、いわゆる ”謎解き” がメインの作品は少ない。編者の方の ”ミステリの間口” が、私よりもかなり広いせいだろう。
 それでもミステリとサスペンス、クライム・ストーリーを併せれば40編(56%)と半数を超えるので、まあ許せるかな。

 私の基準ではミステリではなくても、”読み物” としては面白い作品も多々あった。こういうアンソロジーでなければ出会えなかった作品もあったので、これはこれでよかったと思う。



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