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真実はベッドの中に [読書・ミステリ]


真実はベッドの中に (双葉文庫)

真実はベッドの中に (双葉文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2022/03/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★

 6作収録の短編集。共通して登場する人物もいないし、舞台もそれぞれ異なる。連作短編集というわけではないのだけど、統一したテーマは存在してる。それは ”官能” だ。


「待っている間に」
 ある企業の社員6人が、京都の保養所に集められた。極秘裏に、ある機器を開発するためだ。しかし保養所の中でメンバーの一人が殺されてしまう。6人の中の田原と沙耶は不倫の関係。犯行時刻には情事の真っ最中で、お互いにアリバイがあったのだが・・・

「相互確証破壊」
 江見(えみ)と和沙はダブル不倫。江見はラブホテルでの情事を毎回ビデオに撮り、そのデータのコピーを和沙に渡していた。お互いの家庭を破壊する情報を、お互いに持ち合うという、”相互確証破壊” の状態にするために・・・
 ちなみに ”相互確証破壊” とは、相手の国を滅亡させる量の核兵器を持ち合う国家同士がお互いに睨み合う状態を表現した、冷戦時代の政治用語。

「三百メートル先から」
 大学生の由眞(ゆま)の兄・倫典(みちのり)はひきこもりだった。しかしある夜、窓越しに銃撃を受けて殺害されてしまう。しかも300mも彼方からの狙撃で。由眞の恋人・晴仁(はるひと)は、倫典の幼馴染みだった。由眞は彼のアパート上で、恋人に抱かれながら兄の死について推理を巡らすが・・・

「見下ろす部屋」
 OLの芽依(めい)は、会社の上司・寺谷と不倫をしている。彼が名古屋の支店長に栄転したあとも関係は続いていた。月に一度の支店長会議のために上京する寺谷と、駅のホームと線路を見下ろすことのできるホテルの部屋で逢っていたのだが・・・

「カントリー・ロード」
 深夜の第一京浜。福岡へ帰郷する途中の五十嵐は、広島へとヒッチハイク中の美結という女性を拾う。金を節約するために高速は使わず、”下の道” をゆっくり進む五十嵐。一方、美結の方もほぼ無一文に近かった。彼女は ”代償” として五十嵐に抱かれることになるのだが・・・

「男の子みたいに」
 梨穂(りほ)が男装することを、恋人の浅野は喜んでくれる。情事の時も服を全部は脱がさずに梨穂を抱く。「なぜ男装をさせるのか?」梨穂はルームメイトの麻里奈と ”愛を交わし” ながら、疑問の答えを探すのだが・・・


 本書のどの作品にも、いわゆる濡れ場、セックスシーンがある。もちろんそういう部分が好きな人もいるだろうし、私も嫌いではない(おいおい)。

 でもこの短編集でのそれは、物語の味つけとしてだけではなく、ミステリを構成する要素として存在する。物語の伏線だったり、犯行の動機になったり、真相解明のきっかけになったり、あるいはセックスそのものが謎の中心として設定されたりと、使われ方はそれぞれだけど。

 石持浅海という作家さんは、今までいろんな作品を描いてきたけど、引き出しが多い人なんだなあということを改めて思った。



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