失われた地図 [読書・ファンタジー]
評価:★★☆
本書の舞台となるのは錦糸町、川崎、上野、大阪、呉、六本木など、旧軍の施設があったり、中世近世での激戦地だった場所。
そこにはときおり「裂け目」と呼ばれる謎の空間が発生し、”記憶の化身” と呼ばれる、妖怪のような亡霊のような、要するに人外の存在が湧き出してくるのだ。
主人公・風雅遼平(ふうが・りょうへい)は、”記憶の化身” たちと戦い、「裂け目」を封じる力を持った一族の1人。
仲間たちとともに「裂け目」の発生した場所に赴き、事態を収束させるために人知れず戦っていた。
一方、同族に生まれた鮎観(あゆみ)とは、愛し合い結婚したのだが、息子・俊平が生まれたときから2人の間にすれ違いが生まれていた・・・
ホラー風味のファンタジー・アクション、といった感じ。
恩田陸にはときおり、単発で一風変わった作品を発表することがあるが(「雪月花黙示録」とか)、本書もそのひとつか。
いまのところ続編とかはなくてこれ一冊だけみたいだけど、最後まで読んでも物語的に決着はつかない。分量的にも文庫で240ページに満たないし。
「裂け目」と ”一族” との戦いは遙かな過去から連綿と続いていて、未来に向かっても永遠に続きそう。本書はそのほんの一部を切り取った、ということなのかも知れないが。
鮎観さんの苦悩は十分理解できるのだけど、これでは遼平くんが報われないなぁ・・・と思いながら読み終えた。
コメント 0