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最高の盗難 音楽ミステリー集 [読書・ミステリ]


最高の盗難: 音楽ミステリー集 (河出文庫)

最高の盗難: 音楽ミステリー集 (河出文庫)

  • 作者: 黎一郎, 深水
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2020/05/07
  • メディア: 文庫
評価:★★★

 サブタイトル通り、音楽をテーマにしたミステリー集


「ストラディバリウスを上手に盗む方法」

 21歳のバイオリン奏者・武藤麻巳子(まみこ)は、国際的な音楽コンクールで優勝を果たし、国内で凱旋コンサートを開くことになった。
 芸術探偵・神泉寺瞬一郎のもとにもチケットが送られてきた。彼と麻巳子は同じ師匠についていた兄弟(兄妹?)弟子だったのだという。

 しかしコンサート当日、麻巳子は楽屋で何者かに襲われて意識を失い、その間に彼女の所有するバイオリンの名器・ストラディバリウスが盗まれてしまう。その価値は時価にして十数億円にも達するという。

 瞬一郎とともにコンサートにやってきていた海埜警部補の指揮の下、直ちに満員の観衆やオーケストラの面々が調べられたが見つからない。
 会場の建物はコンサート開始から封鎖されていたので、外部に持ち去られてはいない。必ず内部にあるはずなのだが・・・

 もちろん盗まれたバイオリンの隠し場所がメインの謎。
 途中で、犯人側の描写(誰かは明かされない)が入る。伏線の関係上、必要な部分なのだけど、ここでその場所が分かる人もいるだろう。
 実は私も分かったのだけど、これは推理したからではなく、たまたま ”あること” を知ってたから。ちょっと前、TV番組で扱ってたことを思いだしただけなんだけどね。

 神泉寺瞬一郎の語る蘊蓄も、毎回ながらたいしたもの。
 ”ストラディバリウス” という名前の由来に始まり、なぜそんなに高いのか? なぜ昔に作られたのが今でも重宝されてるのか? 現在の技術でそれを超えるものが作れないのはなぜか? とか、一般の人が素朴に抱く疑問についても丁寧に説明してくれている。
 事件が起こるたびに彼が語りだす蘊蓄は、時々鬱陶しくなって読み飛ばしてしまうこともあるのだけど(おいおい)、今回は興味が持てて、素直に面白かったよ。

 今回のゲストキャラ、麻巳子さんがいいなあ。瞬一郎のことが大好きなのが言葉の端々ににじみ出ていて愛嬌もたっぷり、とても可愛らしいお嬢さんだ。他の作品にもぜひ登場してほしいな。


『ワグネリアン三部作』

 ”ワグネリアン” とは、ドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーの熱狂的なファンのこと。それが女性の場合は ”ワグネリエンヌ” というみたい。

「一 或るワグネリアンの恋」
 大手商社のサラリーマン・森山利和はワグネリアン。結婚を考えている恋人の坂本穂花(ほのか)を、なんとかワーグナーのファンに引き込もうとあの手この手を繰り出すのだが・・・

「二 或るワグネリエンヌの蹉跌」
 和久祢梨亜(わく・ねりあ)は熱狂的ワグネリエンヌ。大学4年となって終活に臨むも、面接の場で思わずワーグナーネタを口走ってしまうなど奇矯な行動をしてしまい、連戦連敗。そこで自ら ”ワーグナー断ち” を決断、背水の陣で採用試験に挑むのだが・・・

「三 或るワグネリアンの栄光」
 深夜のマニア向けカルトクイズ番組。今回のテーマはワーグナー。最強のワグネリアンを自負する ”俺” は、予選に挑むが、結果はなんと3位。上位の2人はサラリーマンの森山、OLの和久。”俺” は雪辱を期して、予選上位6人による決戦大会に臨むが・・・

 この3作は「日本ワーグナー協会」(そんなのがあったんだ・・・)というところが出している年刊誌に掲載されたもの。ミステリと言うよりは、熱狂的なワーグナー・ファンが巻き起こすユーモア・コメディという感じ。


「レゾナンス」

 本作はミステリではないらしい。「らしい」と書いたのは最後まで読んでないから。途中で挫けました。スミマセン。



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