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むかしむかしあるところに、死体がありました。 [読書・ミステリ]


むかしむかしあるところに、死体がありました。

むかしむかしあるところに、死体がありました。

  • 作者: 青柳 碧人
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/04/17
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

 おなじみの日本昔話を、ミステリとして構築し直すというユニークな試みで話題になった作品。


「一寸法師の不在証明」
 ”お椀の舟に箸の櫂” で故郷を出発した一寸法師は、三条右大臣に仕え、その娘の春姫様を鬼の襲撃から救い出す。鬼に飲み込まれ、体の中から針でチクチク刺しまくり、見事に鬼を追い払う。
 鬼が残した ”打ち出の小槌” によって、大きな体となり、春姫様とめでたく結婚することに・・・と、皆様ご存じのお話。
 しかしその同じ日、右大臣の落とし胤と思われる男が殺されていた。現場はほぼ密室状態で、わずか ”一寸” ほどの隙間しかなかったという。しかし一寸法師には、犯行時刻に鬼の体内にいたというアリバイが・・・

「花咲か死者伝言」
 茂吉じいさんが飼っていた犬のシロが ”ここ掘れワンワン”、そこを掘ったら金銀財宝が見つかった。しかしシロは意地悪じいさんの太吉に殺されてしまう。
 茂吉がつくったシロの墓に植えた松の木で作った臼と杵からも金銀財宝が湧いて出た。太吉がその臼を持って行ってしまうが財宝は出ず、太吉はそれを燃やしてしまう。
 茂吉がその灰を撒いたところ枯れ木に花が咲き、それを見たお殿様から金銀財宝を賜った。ところが、太吉は残った灰をみんな持って行ってしまった・・・ご存じ「花咲かじいさん」。
 しかしその4日後、茂吉が死体で見つかる。その右手にはぺんぺん草が握りしめられていた・・・
 意外な犯人、というよりは動機の方が意外だったかな。

「つるの倒叙返し」
 村の庄屋から借金返済を迫られた弥兵衛は、その場で庄屋を殺してしまう。ところがそのとき、弥兵衛の家の戸を叩く音が・・・
 というわけで、弥兵衛のために、おつうさんが自らの羽を使って機織りをする「鶴の恩返し」が始まる、わけなんだが・・・
 これは紹介が難しい。タイトル通り倒叙ものパターンなんだが、それに加えてもうひとひねり。ラストでは唖然。

「密室竜宮城」
 いじめられていた亀を助けた浦島太郎は、竜宮城へ迎えられ、乙姫様をはじめとする魚たちの歓待を受ける。しかしその竜宮城で ”殺人” 事件が起こる。
 魚が殺されて、なんで ”殺人” なのか。それは、竜宮城の中では魚たちは ”人間態” となっているから。
 乙姫様の依頼で、探偵役となった浦島太郎だったが・・・
 竜宮城でしか成立しない密室トリックが炸裂。

「絶海の鬼ヶ島」
 桃太郎とその家来たちの ”襲撃” を受け、壊滅的な被害を受けた鬼ヶ島。
 しかしそれから年月も経ち、生き残った鬼たちの間に新たな子が生まれ、13人(13頭?)まで人数が増えてきた。
 しかしその鬼ヶ島で、殺人(殺鬼?)事件が発生する。一人また一人(一頭また一頭?)と殺されていくのだが・・・
 まさに「そして誰もいなくなった・鬼ヶ島版」(笑)。


 昔話を、「特殊設定ミステリ」として構成し直した作品群。
 一話完結ではあるが、作品間に緩やかなつながりはあって、”特殊アイテム” である ”打ち出の小槌” や、おつうさんが織った ”羽衣” などは複数の作品に登場する。
 物体の大きさを変えてしまう “小槌” など、作品世界だけで有効な ”能力” には、それなりに使用上の制限事項があったりして、それが読者にもきっちりと開示されている(何でもアリではミステリにならないからね)。



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