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碆霊の如き祀るもの [読書・ミステリ]


碆霊の如き祀るもの 刀城言耶シリーズ (講談社文庫)

碆霊の如き祀るもの 刀城言耶シリーズ (講談社文庫)

  • 作者: 三津田信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/06/15

評価:★★★★

怪奇小説家・刀城言耶を探偵役とするシリーズの長編第7作。

物語の舞台となるのは、南側が海に面した強羅地方。
東西方向に5つの村があるが、村と村の間と北側は
険しい山地で隔てられ、それぞれの村は分断されている。

西端の犢幽(とくゆう)村には「海原の首」(江戸時代)、
「物見の幻」(明治)、「竹林の魔」(昭和初期)という、
時代を異にするに3つの怪談が伝わり、さらに
東端の閖揚(ゆりあげ)村には「蛇道の怪」という
現在(戦後)も続いている怪談が1つあった。

本書の冒頭、文庫で130ページほどは、
この4つの怪談を語ることに費やされている。

言耶の大学の後輩・大垣秀継は閖揚村の出身。
彼から4つの怪談を聞いた言耶は取材のために犢幽村へと赴く。

しかし到着早々、村の西の山中にある ”竹林宮” という祠で
変死体が見つかる。なんと死因は餓死だった。
現場は深い竹林に囲まれていたが、歩けば容易に外に出られる。
だが遺体の手足にも怪我などは無い。
なぜ被害者は死ぬまで竹林の中に留まっていたのか・・・

この ”開かれた密室” に続き、岬の突端にある物見台から人が消え、
海岸に面した洞窟の中では刺殺体が発見されるが
どちらも密室状態の中での出来事だった・・・

タイトルの「碆霊(はえだま)」とは、江戸時代に犢幽村に漂着した
難破船の死者たちを、村人たちが浜の沖に浮かぶ岩礁へ祀ったものだ。
村では ”碆霊様祭” というものも行われている。
しかし、普通の神様ならお祭りは年一回、決まった時期にやるものだが
この祭りに限っては、不定期開催(笑)。これも村の謎のひとつ。

文庫で600ページを超える大作で、
530ページあたりから解決編が始まるのだが
そこで言耶が ”事件の謎” として挙げるのはなんと70項目にも及ぶ。

それらに対して合理的な説明を試みていくのだが
このシリーズの常として、仮説を立てては崩し、立てては崩し。
これでは犯人になる人間がいなくなってしまう・・・と思ったら
最後の最後に ”真犯人” が示される。

確かに、辻褄を合わせるためにはこの結論しかないのかも知れないが
私はあんまりこの真相は好きになれないかな・・・
まあ、これは好みの問題だと思うけど。

竹林の密室トリックはシンプルだけど、これはたまらなく恐怖だ。
もし自分がこの状態に置かれたら、正気でいられる自信はない。

殺人事件のみならず、”碆霊様” の正体、さらには
村の開闢以来、隠されてきた ”秘密” まで言耶は暴いていく。
このあたりはこのシリーズでお馴染みのパターンではあるけど
やっぱりそのスケールには驚かされる。

そして、ラストシーン。
この幕切れこそ、怪談そのもの。
ミステリ的にはいろいろ思うところもあったけど、
この結末に全部持って行かれてしまった。


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