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運命の証人 [読書・ミステリ]

運命の証人 (創元推理文庫 M テ)

運命の証人 (創元推理文庫 M テ)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/05/31
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

物語の冒頭は法廷シーン。
被告人はジョン・プレスコット。事務弁護士で本書の主人公だ。
彼は2件の殺人事件の犯人として逮捕されて、ここにいる。

そして本編が始まる。
本書は四部構成になっていて、それぞれの部のラストで
”意外な展開” が待っていて、次の部への ”引き” もバッチリだ。

本書を読むにあたっては、あまり内容を知らないほうがいいと思うので
紹介は必要最小限に留めたいんだけど、
何も書かずに済ますわけにもいかないので・・・

第一部は裁判の6年前に遡る。
駆け出しの弁護士だったジョンは、友人の会計士ピーター・リースから
彼の恋人である女性、ノラ・ブラウンを紹介される。
しかしジョンはノラに一目惚れしてしまう。
このためにジョンは煩悶することになるのだが・・・
そして第一部のラストでは、”ある人物” の死体が発見される。

第二部はその5年後(裁判の1年前)。
いまだ ”事件” の影を引きずっている登場人物たちの生活が描かれる。
その中で第二の死者が出現し、ジョンは5年前の ”事件” と合わせて
2件の殺人犯として逮捕されてしまう。

第三部から現在、つまり裁判の様子が描かれる。

以前に読んだ『そして医師も死す』でもそうだったのだけど
この二作品に共通するのは、
主人公がなんともパリッとしない人物であること。

優柔不断で、その場の雰囲気に呑まれて行動してしまいがち。
あとで自分が窮地に追い込まれると分かっていても。

本書の主人公ジョンもまた、「え? そっちにいっちゃうの?」と
読んでいる方も呆れてしまうくらい、目の前に並んだ選択肢の中から、
必ずといっていいくらい事態が悪化する方を選んでしまう。
なんとも間が悪いというか、先の読みが甘い御仁である。

 そういえば ”マーフィーの法則” なんてのがあったなぁ。
 その法則が服を着て歩いているようなものだ(おいおい)。
 もっとも、こういう主人公の方が物語は面白くなるよね(えーっ)。

本書の原題は「THE SLEEPING TIGER」(眠れる虎)。
これは、ジョンの友人たちが彼につけたあだ名だ。

第一部と第二部で ”いろいろ” あって、裁判になったときには
すっかり気力を失ってしまっているジョンだったが
第三部で証言台に立った ”ある人” の言葉がストーリーの転回点となる。

ジョンの中の ”眠れる虎” を覚醒させ、戦う気概を取り戻させる。
邦題『運命の証人』はここから来ている。

第四部ではもちろん、真犯人が明らかになって大団円。

ミステリとしてもよくできているけど、それに加えて
覚醒後のジョンの、颯爽とした主人公ぶりが快い。
さらに言えば一級品のラブ・ストーリーでもある。
「小説を読む楽しさ」というものを充分に味わえる本だと思う。


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