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殺意の構図 探偵の依頼人 [読書・ミステリ]

殺意の構図 探偵の依頼人 (光文社文庫)

殺意の構図 探偵の依頼人 (光文社文庫)

  • 作者: 章子, 深木
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

元刑事の私立探偵・榊原聡の登場するシリーズの3作目。

本書は「鬼畜の家」「更衣月家の一族」と続いてきた
榊原シリーズの「三部作の完結編」という位置づけらしい。

ストーリー的には独立しているので、本書から読んでも全く問題ないけど
前2作を読んでおいた方が榊原という人間の背景をよく理解できて、
より興味深く読める、かな。

東京都三鷹市で資産家・峰岸巌雄の住宅が全焼、
焼け跡から本人の焼死体が発見された。

放火殺人の犯人として逮捕されたのは巌雄の娘婿・峰岸諒一。
義父の財産目当てと思われたが、諒一はかたくなに無罪を主張する。

しかし諒一が拘置されてから8か月後、彼の妻・朱実が
巌雄の所有する別荘で死亡してしまう。
状況は不可解だったが、警察は事故死と判定する。

そして妻の死を知った諒一は、
「実は自分にはアリバイがあったのだ」と言い出す。

放火事件のあった夜、神奈川県湯河原町のホテルに
愛人とともに宿泊していたというのだ。

同伴した女性の名は頑として口をつぐむ諒一だったが、
警察の捜査によってホテルでのアリバイは確認され、
諒一は晴れて無罪判決を勝ち取ることになる。

しかし釈放されて2週間後、
妻が事故死した別荘で諒一の死体が見つかる・・・

探偵・榊原は、事件の関係者(誰であるかは最後に明らかになる)から
依頼を受けて調査を始める。

事件自体はかなり単純なように思えるが、それは氷山の一角。
登場人物は多くないけれど、複雑な家族関係をもち、
みな一筋縄ではいかない者ばかり。
彼ら彼女らが心に秘めた想いが、事件をより複雑化させていく。

文庫で約370ページほどなのだけど、
榊原による ”謎解き” がはじまるのは270ページあたりから。
つまり解決編が100ページもある。
それくらい、”濃密な真相” が待っているのだ。

小さな矛盾を丹念に拾い集めて、ジグソーパズルのピースを
少しづつ埋めていくような榊原の推理が読みどころ。

新しいピースが提出されるたびに事件の様相も二転三転、
ひっくり返るたびに驚かされる。
最終的に提示される真相は、実に哀しい。

依頼人にとっても、榊原にとっても。


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