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皇帝と拳銃と [読書・ミステリ]

皇帝と拳銃と (創元推理文庫)

皇帝と拳銃と (創元推理文庫)

  • 作者: 倉知 淳
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/11/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

TVドラマ『刑事コロンボ』シリーズの登場によって
一気に市民権を得た(といっては言い過ぎか) ”倒叙ミステリー”。

日本でもTVドラマ『古畑任三郎』シリーズがヒットしたし、
(私は数本しか観てないんだけど、よくできてるのは分かった)
小説の世界でも倒叙ものを書く人が増えてきた。
大倉崇裕の『福家警部補』とかね。

本書も倒叙ミステリーの新シリーズだ。
主役を張るのは ”乙姫警部”。
字面だけ観るとなんともラブリーなのだが、本人の容貌は真逆。
特殊メイクで死神に化けたような不気味なご面相で全身黒づくめと
”禍々しい” 外見で、殺人事件の犯人から見れば
まさに ”命を刈りに来た” ように思えるだろう。

そんな乙姫警部が解決する、4つの事件を描いた短篇集だ。

「運命の銀輪」
和喜多(わきた)文彦が夜のジョギング中に撲殺される。
犯人は伊庭照彰(いば・てるあき)。
二人は合作して ”四季杜忍(しきもり・しのぶ)” というペンネームで
小説を発表、ベストセラー作家となっていたが、
二人は今後の方向性の違いで諍いを起こしていたのだ・・・

「皇帝と拳銃と」
東央大学文学部教授・稲美は学内で ”皇帝” と呼ばれていた。
事務員の津我山は、稲美が文部科学省からの補助金を
不正流用していたことを知り、密かに脅迫するが、
逆に稲美に殺されてしまう。
津我山の死体は大学の構内で発見される。
工事中の屋上から飛び降りたらしいのだが・・・

「恋人たちの汀」
人気劇団〈家伝風迅〉の主宰にして脚本・演出家の間宮想悟(そうご)は
叔父で高利貸しでもある黒瀬健造から、
劇団の赤字補填のために多額の借金をしていた。
その返済を迫られた間宮は黒瀬を殺してしまう。
彼は殺害現場から、劇団の看板女優で恋人でもある西条美凪に
電話を掛けてアリバイ工作を頼むのだが・・・

「吊られた男と語らぬ女」
古いビルの1階にある工房で、彫刻家・堀部直人の死体が見つかる。
遺体は首吊りの状態だったが、何者かによって
死後に工作された形跡があった。
ビルの2階を使っている写真家の相内伽也(あいうち・かや)は、
つい先日、堀部からプロポーズされたばかりだったのだが・・・

倒叙もののキモは、犯人の些細なミスや事件の小さな矛盾点を
捜査する側(本書では乙姫警部)が突いていくことによって
完全犯罪がほころびていく過程にあるのだが、
「運命のー」はまさにそのお手本みたいな作品。
普通なら見逃してしまうようなところに目をつけていて
読んでいてなるほど、って思ってしまう。

「皇帝と-」のラストで、稲美は「いつから私を疑っていたのかね」と
乙姫警部に問うが、それは読者も知りたいところ。
そしてその答えを聞いて「そんなところから」とまた驚く。

「恋人ー」は、本書の中でいちばん傑作だと思う。
黒瀬のある ”習性” が、終盤で乙姫が提示する ”ある証拠” に
結びつくのだが、まさに「そうだったのか!」と膝を打ってしまう。

「吊られたー」は、犯人像がユニーク。
終盤で明かされる動機は実に意外なものなんだが
こういう○○○○○○○を持った人っているのかなぁ。


nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-27 10:10) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-27 10:10) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-27 10:10) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-27 10:10) 

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