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ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン [読書・SF]

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/10/31
  • メディア: 文庫
ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/10/31
  • メディア: 文庫

舞台となるのは、第二次世界大戦で日独の枢軸国側が勝利した世界。

何をどうやったら日本がアメリカに勝てるのか思いつかないが
作中で断片的に語られたところによると、
日本は1941年に開戦せずにじっくりと準備を進め、
連合軍側よりも先に原子爆弾を完成、
サンノゼに投下したことによりアメリカは降伏する。
時に1948年7月4日。
この日からアメリカ独立記念日は、日本の対米勝利記念日となった。

これによりアメリカは、ナチス・ドイツが支配する東半分と
大日本帝国が支配する西半分に分割される。
その西半分が、本書のタイトルにもなっている
『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』(USJ:日本合衆国)だ。

物語は終戦から40年後の1988年に始まる。
主人公は石村紅功(べにこ)、愛称ベン。
大日本帝国陸軍大尉で、USJの検閲局に勤務する39歳の男性だ。

 ネーミングの由来は、彼の両親が女の子が生まれると決めつけていて
 「べにこ」という名しか考えていなかったから、らしい。
 この両親にまつわる、あるエピソードがベンの人となりに
 大きく影響を与えているのだが、ここには書かない。

士官学校をビリから3番目という超低空飛行で卒業し、
同期がみんな佐官へ昇進していく中、いまだに大尉のまま。
当然ながら屈折した性格で、しかも女にもだらしないという
典型的な ”ダメ人間” として物語に登場してくる。

ある夜、恋人の金古(かねこ)ティファニーと出かけたベンのもとに
かつての上官だった六浦賀(むつらが)将軍から電話がかかってくる。
将軍の娘・クレアが死んだことを伝える内容だった。

翌日、ベンの職場に現れたのは
特高(特別高等警察)課員・槻野昭子(つきの・あきこ)。
彼女から六浦賀将軍の電話について追及されるベン。

 特高とは、大日本帝国の国体護持のために
 反体制的な危険思想を取り締まる機関だ。

六浦賀将軍はかつて、兵士訓練用のシミュレータである
兵棋演習(ウォーゲーム)の開発をしていた。

彼は退役したが最近になって失踪し、それと時を同じくしてUSJ内で
あるゲームが流行し始めた。タイトルは『アメリカ合衆国』。
アメリカが戦争に勝利した世界が舞台で、それをプレイすると
ゲリラ戦に勝利する方法が示されるというシミュレーションゲームだ。

特高は『アメリカ合衆国』には六浦賀将軍が絡んでいると見ていた。

ベンは六浦賀のもとでゲームデザイナーとして働いていた過去があり、
そのために槻野と組まされ、将軍を追って西海岸を走り回る羽目に。

全くタイプの異なる男女のバディものとして物語は進行していく。

ダメ人間のベンに対し、槻野は真逆とも言うべき対照的なキャラ。
極めて優秀だが冷酷非情、骨の髄まで「天皇陛下万歳」に染まっている。
反体制派や天皇を侮辱する人間をためらいなく抹殺し、
そこには一片の慈悲もない。

いささか極端にも思うが、(こちらの世界の)太平洋戦争中に
日本国内で行われた思想統制が、そのままアメリカに持ち込まれて
40年間にわたって ”熟成” したら、こういう人間になるのかも。

それがそのまま、USJを統治する大日本帝国の姿勢であるから、
必然的に反体制組織も現れるし、激しく抵抗もする。
そのひとつ、”ジョージ・ワシントン団” に2人は狙いを定めていく。

面白いのは、”まるでダメなおっさん” だったベンが、
物語の進行と共にすこしずつ ”本性” を表していくところ。
実は○○の○○○○であり、○○○な○○○○○○だったりと、
だんだんヒーローっぽくなっていき、終盤ではまさに主役となる。

さて、文庫版の表紙には巨大ロボットが描かれている。
これは「メカ」と呼ばれる軍の制式兵器だ。

作者は韓国生まれでアメリカ育ちのアジア系作家だが、
子どもの頃から日本の文化の影響を多大に受けてきたらしい。
それにはもちろんサブカルも含まれ、巻末の謝辞には
宮崎駿、三島由紀夫、押井守、庵野秀明、深作欣二、
黒澤明、大友克洋など、多くの日本人が挙げられている。

となると、さぞかし派手な「メカ戦」が描かれるのだろう・・・
と思いきや、巨大ロボットの登場シーンは意外に少ない。
あくまでストーリーの中で必要なところに出てくるだけ。

続く第二作『メカ・サムライ・エンパイア』(MSE)では、
メカのパイロットを目指す少年が主人公になるので
巨大ロボットの戦闘シーンもふんだんにあるらしいのだが・・・

そして三部作の完結編となる
『サイバー・ショーグン・レボリューション』(CSR)。

『USJ』を含めて三部作を構成しているらしい。
『MSE』も『CSR』も手元にあるので、近々読む予定。


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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-03-15 22:49) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-03-15 22:50) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-03-15 22:50) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-03-15 22:50) 

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