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誰も僕を裁けない [読書・ミステリ]

誰も僕を裁けない (講談社文庫)

誰も僕を裁けない (講談社文庫)

  • 作者: 早坂吝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

現役女子高生にして娼婦という、援交少女・上木らいちが
探偵役となるシリーズの一編。

埼玉県の高校3年生・戸田公平は、埼(みさき)という少女と出会う。
大企業の重役令嬢だという彼女に恋をしてしまう公平。

ある休日の深夜、埼の家に招かれた公平は
密かに忍び込んだ彼女の部屋で、セックスに溺れた一夜を過ごす。

しかし明け方に帰ろうとするところを彼女の父親に見つかり、
警察に通報されて逮捕されてしまう。
容疑は青少年保護育成条例違反、いわゆる ”淫行条例” 違反。
埼は17歳だったのだ・・・

一方、らいちのもとに謎の宅配便が届く。
差出人は「逆井東蔵(さかい・とうぞう)」。中身はメイド服。
要件は、彼女をメイドとして雇いたいとのことだった。

SNSで検索して分かったのは、東蔵は「逆井重工」の社長で、
埼玉在住の弟・玉の助と二人で会社を切り盛りしているらしい。

ゴールデンウィークの5連休の初日、らいちは東蔵の屋敷を訪れる。
そこは上から見るとプロペラの形をした異形の館だった。
東蔵はそこに妻の火風水(ひふみ)、
一心(いっしん)・二胡(にこ)・三世(さんせい)という3人の息子、
そして娘の京(みやこ)、使用人の渋谷と共に暮らしていた。

らいちは逆井家のメイドとして迎え入れられるが
その翌朝、三世が自室で絞殺死体となって発見される。

物語は公平のパートとらいちのパートが交互に語られていく。

弁護士の勧める略式手続き(罰金の支払いで済ませること)を拒否し、
裁判で自分の無罪を証明しようとする公平。

三世に続いて再び殺人が起こり、それを調べていくうちに
逆井邸に隠された秘密の ”からくり” に気づくらいち。

もちろんこの2つの流れは終盤でひとつになるのだけど、
作者は読者をミスリードさせるために
多くの要素を惜しげもなく注ぎ込んでいるので、
らいちが説き明かす真相に驚かされる人が多いだろう。

裏表紙の惹句には「エロミス×社会派」なんて書いてある。
たしかに作中の描写を読む限り、「青少年保護育成条例」なるものは
かなりあやふやで恣意的な運用も可能なシロモノのようだ。

しかしそういう条文の不備さえもミステリのネタに、
あるいはストーリーの構成材料にしてしまうという
ものすごく貪欲な創作姿勢を感じる。たいしたものだと思う。

本シリーズの特徴(笑)であるところのエロ要素については、
前作まではらいちさんが一手に引き受けていたのだけど
今作ではちょっと控えめか。その代わりなのかどうかわからないが
序盤で描かれる埼さんの淫乱ぶりが凄まじい(おいおい)。

最後に置かれた「エピローグ」では、20年後の戸田公平が登場する。
ここに至り、本書は彼の成長の物語でもあったことが明らかになる。
”大人” になった彼の姿に不思議な感動を覚えたことは書いておこう。


nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-03-15 22:48) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-03-15 22:48) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-03-15 22:49) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-03-15 22:49) 

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