SSブログ

イメコン [読書・ミステリ]

イメコン (創元推理文庫)

イメコン (創元推理文庫)

  • 作者: 遠藤 彩見
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/05/31
  • メディア: 文庫
評価:★★

主人公は、地方都市に暮らす男子高校生・武川直央(なお)。
些細なこと(本人からすれば ”些細” ではないのだが)から
現在は不登校状態で、このままでは留年も時間の問題。

そんな彼の前に現れたのは、一色一磨(いっしき・かずま)という
謎のイケメン。直央の母の幼馴染みである市長・五味(ごみ)の
イメージ・コンサルタントを務めているのだという。

「第一話 キラースマイル」
駅前に向かうために近道をしようと市役所の敷地を突っ切っていた直央。
突然上がった悲鳴とともに降ってきたのは紙吹雪。
二階の窓から紙吹雪が詰まった段ボール箱が投げ落とされ、
落下場所の近くにいた女性が悲鳴を上げたのだ。
駆けつけた警備員に、疑いの目とともに事情を聞かれ、
困惑する直央を救ったのが一色だった。
女性の名は梢水穂(こずえ・みずほ)。市役所内のカフェで働いていた。
直央は一色と共に彼女が狙われた理由を探り始めるが。

「第二話 色メガネ」
駅前広場拡張のため、住民の立ち退きが進む駅周辺の住宅街。
そこを一色と共に通りかかった直央は、ある騒ぎに遭遇する。
アパート「メゾン・タグチ」の玄関スペースに
大量の枯れ葉が詰め込まれていたのだ。
「メゾン・タグチ」は入居者が挙って立ち退きを拒んでいて、
市の説得にも応じないのだという。
立ち退きを担当する市職員・坂井へ指導をする一色は
「メゾン・タグチ」の入居者たちの ”ある秘密” に気づく。
しかし、いくらなんでも作中の坂井みたいなポンコツ職員を
住民対話の場に放り込む上司は何を考えているのか(笑)。

「第三話 デスボイス」
登校を巡って母親と喧嘩した直央は家を出てしまうが、行く当てもない。
そんなところを一色に拾われ、東京にある彼の自宅兼オフィスへ向かう。
20階建てのビルの上層階を占める彼の自宅に驚く直央。
しかしうっかり非常階段へ出てしまい、室内へ戻れなくなってしまう。
仕方なく非常階段を1階まで降りていく途中、
高価な靴が片方だけ置かれているのを見つける。これをきっかけに
二人は広告会社社長・富田萌子(もえこ)を巡る騒ぎに巻き込まれる。

「第四話 うぬぼれ鏡」
市内にあるベアー文化博物館に強盗が入るという事件が起こる。
直央と一色はその博物館を訪れるが、館長の熊谷が
創設者の孫という威光を笠に、職員に対して
パワハラまがいの行為をしているところに遭遇する。
二人は博物館の職員の一人、鶴田が密かに
転職を考えていることを知って協力することになるが、
その矢先、所蔵品の壺が壊されていることが発覚、
鶴田がその犯人と疑われることになってしまう。

人は見た目が8割だか9割だかって本が
一時期売れてたのを思い出したが、たしかに人間の評価には
第一印象が大きなウエイトを占めているのは間違いないだろう。
中身が大事なのはもちろんだが、そこにたどり着く前に
まず外見で評価を下してしまう人も少なくないだろう。
(私にもその傾向があることは否定しない。)

逆に、外見を修正することがその人の内面にまで変化を及ぼし、
総体的な評価が上昇することもあるだろう。さらには、
それによってその人を取り巻く諸々が上手く回るようになり、
結果的に ”仕事ができる” ようになることを目指して、
本書の一色は ”見た目に問題のある” 登場人物たちを指導していく。

そのあたりは作中でもかなり描写されるので
本書には ”見た目改善” の入門書的な効用はあるかも知れない。

一色が「五味市長のイメージ・コンサルタント」という
設定になってるのは、それによって市内で起こる事件に
探偵役として絡みやすくするためだろうとは思うが
海外にも多くの顧客を抱えて、そちらからもかなりの高収入を得ている
(という設定の)一色が、片田舎の地方都市の仕事に、
そんなに熱心に取り組むというのはちょっと不自然さも感じる。
作中では彼なりに理由を述べてるけど、
コスパはかなり悪いんじゃないかなあ?って思う。

そして星の数が少ないのは、やっぱり主人公である直央くんが
どうにも好きになれないところが大きい。

彼が置かれた境遇は同情するし、本書の4つのエピソードを通じて
少しずつ成長していくのは感じるが、
読者の(というか私の)期待に反してそのスピードはかなり遅く感じる。
まあ、人間はそんなに簡単に変われないのだ、
って言われればその通りなのだが。

本書のラストで、彼はある決断をする。
現実世界で考えたら、その選択はアリだと思うし
実際そうしている人も多いだろう。
不登校からひきこもりになり、そのまま社会から
完全にドロップアウトしてしまう人だっているのだろうから
それと比べれば遥かに前向きなことではあるのだが・・・

でも、これはフィクションだからねぇ。
もうちょっと違う選択をして欲しかったかなぁ、と思ったりした。

それは、直央くんにとっては無理難題なのだろうか・・・


nice!(4)  コメント(4) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-12 02:15) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-12 02:16) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-12 02:16) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-12 02:16) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント