SSブログ

花髑髏 [読書・ミステリ]

花髑髏 (角川文庫)

花髑髏 (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/06/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★

由利麟太郎シリーズのTVドラマ化に伴う復刊、その4冊目。
長めの中編(というか短めの長編)1作と短篇2作を収録。

「白蝋変化(びゃくろうへんげ)」
文庫で約360ページある本書のうち、およそ230ページを占める。
日本橋の老舗小間物店・べに屋は、跡継ぎの男子が病死したため
娘の梨枝(りえ)に親族の男子の中から婿養子を迎えることになった。
選ばれた慎介は芸術家肌の男で、しかも声楽家・六条月代と
恋愛関係にあって近く結婚することになっていたが
親族一同の圧力に屈してしまい、梨枝と夫婦となった。
しかし1年後、梨枝が姿を消し、地下室の竈(かまど)から
人間一人分の骨、歯、そして灰が発見された。
妻の殺害犯人として慎介は逮捕され、裁判で死刑が宣告される。
彼の無罪を信じる月代は、驚くべき計画を実行する。
パリで知り合った伝手を利用して監獄の下までトンネルを掘り、
慎介を脱獄させようというのだ。
しかしトンネルが貫通したまさにその日に囚人の入れ替えがあり、
慎介の代わりに別の人間を獄舎から解き放ってしまう。
その男こそ ”白蝋三郎” と呼ばれる希代の大悪人だった・・・
物語はこの ”白面の怪人” を皮切りに、美しき声楽家・六条月代、
月代を我が物にせんと企む狡猾なる医学博士・鴨打(かもうち)、
肉体美を誇示するレビューの女優・花園千代子、
そしてなぜか鉄格子の中に監禁されていた謎の美少年と
次々にアクの強いキャラが登場し、先の展開が全く予想できない。
物語の進行もスピーディで、
横溝正史のストーリーテラーぶりが堪能できる。
中でも活躍が目立つのは白蝋三郎。
冒頭での登場から衝撃のラストまで ”持っていって” しまい、
ほとんど主役級の扱い。
さしもの由利先生と三津木俊助も影が薄くなるほどだが、
そもそもの発端である梨枝殺害事件の意外な真相を暴くところは流石。

「焙烙(ほうろく)の刑」
”焙烙” には、「素焼きの土鍋の一種」という意味と
「火あぶりの刑」の二つの意味があるらしい。
この作品ではもちろん後者を指すのだろう。
日東映画のスター俳優・桑野貝三(くわの・かいぞう)は
又従姉妹の瀬川葭枝(よしえ)から助けを求められる。
彼女の夫・直人が何者かに捕らえられていて、
身代金を持って迎えに来てくれと言っているのだ。
貝三は指示のあった場所へ向かうのだが・・・
本作には「珠実」という女性が登場するのだが、
他の作品にも(キャラとしては全く無関係だが)
同名の女性が登場していた記憶があるし、
あの「犬神家の一族」のヒロインも「珠代」さんだったよなあ。
横溝正史は「珠」という字が好きなのか。

「花髑髏」
由利先生のもとへ ”花髑髏” と名乗る人物から ”挑戦状” が届く。
由利先生と三津木俊助が指示された場所へ赴くと、
そこには荷車に長持ちを積んで運ぶ二人の男が。
そしてその長持ちの中に拘束されていたのは
高名な精神病学者・日下瑛造の養女・瑠璃子だった。
そして日下邸に向かった一行が発見したのは、瑛造の刺殺体だった・・・
「百蝋変化」といい、この「花髑髏」といい、
ラストの決着のつけ方は横溝正史らしいというか
昭和期のミステリにはこういう結末が多かったような・・・


nice!(5)  コメント(5) 
共通テーマ:

nice! 5

コメント 5

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-08-30 10:09) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-08-30 10:09) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-08-30 10:09) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-08-30 10:10) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-08-30 10:10) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント