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爆撃聖徳太子 [読書・歴史/時代小説]


爆撃聖徳太子 (PHP文芸文庫)

爆撃聖徳太子 (PHP文芸文庫)

  • 作者: 町井 登志夫
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2012/07/17
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

タイトルからしてぶっ飛んでるんだけど、内容もぶっ飛んでる。
とは言っても、聖徳太子がB29に乗って
どこかに爆弾を落としに行くとかいう話ではない(当たり前だ)。

いちおう飛鳥時代を舞台にした古代史小説・・・なんだろうなぁ。


タイトルこそ「聖徳太子」となっているのだが、
視点人物は小野妹子(おののいもこ)である。

西暦590年、若き小野妹子は北九州の地で、
大陸からの難民が押し寄せているのを見る。
中国大陸に起こった帝国・随が周囲の隣国を次々に従え、
それに追われた人々が海を越えて倭国(日本)にやってきていたのだ。
随の次なる征服目標は朝鮮半島、そして琉球。

既に琉球には随の皇帝から服属を促す使者がやってきていた。
琉球の長たちからの援軍要請を受けた厩戸皇子は、
朝廷に無断で琉球に渡ってしまう。
どうやら、勝手に随と戦いを始めてしまうつもりらしい。

慌てた朝廷は皇子を連れ戻すために
小野妹子と蘇我蝦夷(そがのえみし)を遣わすのだが・・・


上に書いた文章で出てきた皇子の行動からも分かると思うが
本書に登場する聖徳太子は、とんでもないキャラクターである。

「うるさああああい」と叫びながら
あたりかまわず走り回ったりするなど
とにかく突拍子もない行動をとり、蘇我蝦夷からは
「気の触れた奴」とか「たわけ野郎」とか呼ばれている。

 なぜかキリストの生誕のエピソードは知っているらしく、
 時折自分のことをキリストになぞらえることもあったりする。

しかし、そんな皇子の奇矯な行動は、彼に備わった一種の ”超能力” に
由来するものだということが次第に明かされていく。

同時に、未来を見通す目を持っており、
近い将来、隋が朝鮮半島と琉球を手に入れたら次の目標は倭国になる。
彼が琉球防衛に暴走するのもそれが理由だった。


その後、遣隋使となった小野妹子だが、皇子の ”悪縁” は途切れず、
(というか、皇子に無理矢理引き込まれて)
いよいよ半島への侵攻を始めた隋の大群に対して、
徹底抗戦する高句麗軍に加わり、各地を転戦する羽目になる。

終盤のクライマックスは、遼東城に立てこもる高句麗軍と、
その周囲を固めた隋の大軍との壮絶な籠城戦。

ここが落ちれば半島は隋の支配下となり、隋軍の矛先は倭国へ向かう。
まさに背水の陣で臨む高句麗軍&小野妹子に対して隋軍は、
あるときは物量にものを言わせて、あるときは奇手奇策を用いて
着実に高句麗軍の戦力を削り取っていく。

絶望的なまでの彼我兵力の差に、
妹子の命運も尽きたかと思われるが・・・
ここの攻防戦だけでも本書を読む価値があると思う。


聖徳太子のイメージといえば、コミック『日出処の天子』(山岸凉子)が
まず頭に浮かんでしまうんだが(それも如何なものかと思うが)
本書の聖徳太子もまたユニークで、”人知を超えた存在” という意味では
案外共通しているのかも知れない。

nice!(3)  コメント(3) 
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コメント 3

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-31 02:06) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-31 02:06) 

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-31 02:06) 

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