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天冥の標 I メニー・メニー・シープ 上下 [読書・SF]


天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小川 一水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/09/30
  • メディア: 文庫
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小川 一水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/09/30
  • メディア: 文庫
「天冥の標(てんめいのしるべ)」とは、2009年9月から
文庫書き下ろしの形で刊行が始まった大河SFシリーズのこと。

シリーズそのものは2019年2月に最終巻が刊行されて完結、
全10部、計17巻というボリュームの大作となった。

内容的には一種の「未来史もの」といえるだろう。

アシモフのファウンデーション・シリーズもそうだったし
ハインラインも、初期の作品群は同一の未来史に属していたはず。
ラリー・ニーヴンの「ノウン・スペース」シリーズとか
フランク・ハーバートの「デューン」シリーズとか・・・懐かしいねえ。

日本でも谷甲州の「航空宇宙軍史」とか
田中芳樹の「銀河英雄伝説」なんかも未来史ものだよねえ。
眉村卓の「司政官」シリーズなんてのもあったなあ・・・

閑話休題。


先輩作家たちの有名なシリーズに新たな1ページを加えようというのが
この「天冥の標」シリーズなのだろう。


さて、第1巻は西暦2803年、
人類の入植以来、300周年を迎えようという
植民星「メニー・メニー・シープ」から始まる。

この星の地殻からは化石燃料がほとんど産出しないため、
唯一と言っていいエネルギー源は植民船シェパード号の動力炉。
そのコントロールを握る一族が ”臨時総督” として惑星を支配していた。

 もっとも、エネルギーが不十分なためか、
 メニー・メニー・シープではごく狭い範囲にしか植民が進んでいない。

しかし近年、臨時総督ユレイン三世は、
地下深くに眠るシェパード号の発電能力が不調を来している、
という理由で植民地全域への配電を制限し、
住民たちへの弾圧を強めつつあった。

そんな中、セナーセー市で謎の疫病が蔓延する。
市井の医師カドムは、治療に当たりながらもその感染源を突き止める。
それは謎の怪物 ”イサリ” だった。

疫病そのものは、太古から伝わる抗ウイルス薬で
食い止めることに成功(ついでに病名も「冥王斑」と判明)するが、
イサリは臨時総督府に連れ去られてしまう。

やがて、弾圧に耐えかねた人々は総督府へ反旗を翻す。
そして<海の一統>の若きリーダー、アクリラは
総督府の支配の及ばない土地を求めて旅立つが、
彼方の地で彼が見たのは驚くべき光景だった・・・


およそ800年後の未来から始まる物語なので、
当然ながら意味の分からない言葉や設定、謎が頻出する。

「ダダー」、「ドロテア」、「石工(メイスン)」とは何か?
「冥王斑」とイサリにはどんな関係があるのか?
人間に性愛で奉仕するアンドロイドである《恋人たち》(ラヴァーズ)。
そして、ラスト近くで現れる《咀嚼者》(フェロシアン)・・・


ストーリーの行く末としては、
植民者たちが圧政を敷く総督を倒してめでたしめでたし・・・
っていくと思うのだが、ところがどっこい、意外な展開を迎える。
物語は収束するどころか、逆に制御不可能とも思えるような
大暴走が始まったところでページが尽きるのだ。

「えーっ、ここで終わりぃ?」って誰もが思うだろう。
そして、続巻を待つのだろうけど・・・

実は第2部である「天冥の標 II 救世群」は
「I」の続きではないのである(なんと!)。

物語は2015年の地球に戻り、疫病「冥王斑」の世界的なパンデミックと
タイトルにある《救世群》という ”組織” の誕生が描かれるのだ。

第3部である「天冥の標 III アウレーリア一統」の舞台は西暦2310年。
「I」に登場した<海の一統>の先祖たちが、
「ドロテア」を巡って太陽系狭しと大活躍するスペースオペラ。

実はこの文章を書いている時点で
第4部「天冥の標IV 機械じかけの子息たち」を
読んでいる途中なのだけど、西暦2313年を舞台に
《恋人たち》の少女と《救世群》の少年が主役になって、
なんとも淫靡な物語が展開している。

つまりこのシリーズは、未来史であると同時に
一冊ごとは異なる作風で書かれていて
まさに小川一水という作家が、持てる引き出しを
全開にして構築している、一世一代の作品群なのだろう。

巻が進むにつれて時間も未来に向かい、様々な設定も明かされ、
そしてどうやら第8部あたりで第1部の時間軸に追いつくらしい。
だからこの「メニー・メニー・シープ」の行く末は
そこまで読み進めないと分からないわけだ(おいおい)。

現在のところ、月1冊のペースで読んでるので
読み終わるのは来年の今頃かな・・・

nice!(3)  コメント(3) 
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コメント 3

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-26 22:15) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-26 22:15) 

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-26 22:15) 

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