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プロメテウス・トラップ [読書・冒険/サスペンス]

プロメテウス・トラップ (ハヤカワ文庫JA)

プロメテウス・トラップ (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 福田 和代
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/03/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★

6編の短編が収められているけれど、
ストーリー的には連続している連作集となっている。

能條良明(のうじょう・よしあき)は、そのスジでは
"プロメテ" の名で知られる伝説的な凄腕ハッカーだった。
14年前、MITに留学中にFBIのシステムに侵入を果たして
逮捕された前歴がある。

今は日本で平凡な在宅プログラマとして生きている能條の前に
『村岡』という男が現れ、ICチップの解析を半ば強制的に依頼してくる。

そのチップの中身は電子パスポートだった。
『村岡』はICチップの中身を書き換えて
アメリカへの不法入国を企てていたのだ。
能條は依頼を受けたものの、土壇場で彼を出し抜く手立てを考え始める。

これが巻頭の「プロメテウス・トラップ」。
じつはこれは序章で、能條をアメリカに合法的に再入国させるための
工作だった。もちろん、プロメテの腕試しを兼ねて。

その工作の主体はICPOとFBI。
目的は、最近アメリカを脅かしているサイバーテロ組織の摘発。
その捜査チームに能條は選ばれたのだ。

チームリーダーは村岡、そしてもう一人のメンバーは
かつて14歳でMITに入学した天才少年で、
能條と同級生だった "パンドラ" ことポール・ラドクリフ。
この3人がテロ組織に挑むことになる。

その糸口となったのは、FBIの捜査線上に浮かんだ
マーケティング調査を専門とするロジカル社。
しかし強固なセキュリティに守られ、ネット経由での侵入は容易ではない。
能條たちは、直に社内へ入り込むことにするが・・・

というように、テロ組織の実態解明に挑むチームの行動が綴られていく。

そしてクライマックスは4つめの短編
「プロメテウス・チェックメイト」だろう。

彼らの捜査は続き、たどり着いたのは
オンラインゲームを運営しているネットマスター社。
ネ社が開発したAIと6回対戦し、最終的に勝利すれば
10万ドルが支払われるという。
そして決勝戦は公開の場で行われ、ネ社の主要メンバーも姿を現す。
能條たちは対戦者としてパンドラを送り込み、
首尾よく決勝まで進むのだが・・・


本書の初刊は2010年なのでもう9年前になる。
ITの世界で9年なんて、二世代くらい昔になってしまうんじゃないかと
思うが、読んでいても古さを感じさせない。

 文庫化が2017年なので、それに際して
 加筆・修正が行われているのだろう。

たとえばコンピュータ(AI)とのチェス対決では、
現在ではもう人間が勝てなくなってしまっているのだけど、
作中ではうまく条件付けがしてあって、
挑戦者側にも勝てる可能性を残してある。

ラストでは意外にも、物語全体に仕掛けられていたからくりが
明かされたりしてミステリ的にも楽しめる。


「パンドラ in 秋葉原」
巻末収録のボーナストラック。
能條の招きで来日したパンドラは、秋葉原観光に繰り出す。
そこで、謎の三人組の男に追われるメイド姿の少女を助けるのだが・・・


作者の前歴はシステムエンジニアだったとのこと。
そのせいか、IT系の描写は地に足が着いた書きっぷり。
とは言っても、ネットとかの詳しい知識は無くても
読むぶんには困らないようになってるので大丈夫だったよ。

nice!(3)  コメント(3) 
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コメント 3

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-01-28 20:28) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-01-28 20:28) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-01-28 20:28) 

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