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怪しい店 [読書・ミステリ]


怪しい店 (角川文庫)

怪しい店 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

臨床犯罪学者・火村英生と推理作家・有栖川有栖の活躍する
ミステリ・シリーズの短編集。

今回は「店」にちなんだ作品を5編収録している。

「古物の魔」
骨董店〈骨董 あわしま〉の主人、粟島左衛門(さえもん)は
最近商売に身が入っていない様子。
ある日骨董市から帰ってきた左衛門は「変な物を掴んだ」と
甥の時也(ときや)に語り、その翌日に撲殺死体となって発見された。
現場に残されていなかった凶器の行方から紡ぎ出される推理が
するすると真犯人に繋がるのは見事。

「燈火堂の奇禍」
京都の街を散策していたアリスは、
たまたま通りかかった古書店〈燈火堂〉へ入るが、
そこの店主は前日、万引き犯ともみ合ったことが原因で入院していた。
常連客の証言から、希少本の詩集が1冊、
店から消えていることが判明するが、
火村は「その万引き犯は本を盗んではいない」と断言する・・・
”日常の謎” を安楽椅子探偵の火村が解き明かす。

「ショーウィンドウを砕く」
夕狩正比古(ゆうかり・まさひこ)が自ら社長を務める
芸能プロダクションは、経営危機を迎えていた。
資金繰りに駆け回るも万策尽きて、いよいよ倒産が決定的になった時、
思い余った正比古は愛人・愉良(ゆら)を殺してしまう。
警察の捜査が始まり、正比古の前には警察の協力者と称する
”学者と作家の二人組” が現れる・・・
火村シリーズではあまりお目にかからない倒叙もの。
現場の疑問点を突く火村と、ミスを挽回しようとする正比古。
二人の攻防も面白いし、ラストで火村が提示する ”証拠” もなかなか。
最初から犯人が分かっている倒叙ものには、あまり手が伸びないんだけど
たまに読む分には面白いし、ましてや有栖川有栖なら間違いない。

「潮騒理髪店」
海辺の小さな町で調査を終えた火村は、次の上り列車まで
2時間半も待ち時間があることから、駅を出て理髪店へ向かう。
途中、海辺に立つ二十歳ほどの美女が、
近くの線路を通る下り列車の特急に対して、
手にしたハンカチを振っている所に出くわす。
火村は、入った理髪店の主人との会話から、
美女の行動の意味を推理する・・・
これも ”日常の謎” 系ミステリなんだが、
ロマンチックな光景から意外な ”真相” が導かれていく。
本作とは全く関係ないんだが、『砂の器』(松本清張)で
美女が列車の窓から紙吹雪を撒くシーンを思い出したよ。

「怪しい店」
大阪・京橋近くの裏通りでアリスが見つけた謎の店〈みみや〉。
その実態は『聞き屋』で、店主の磯原記久子は
カウンセラーもどきのことをしていたらしい。
その記久子が絞殺死体となって発見される。
被害者は、仕事上知り得た内容を元に、恐喝もしていたのだ。
現場のテーブルの裏の痕跡から、火村は
ボイスレコーダーが仕掛けられていた可能性を指摘する・・・
そのボイスレコーダーの存在から真犯人を導き出す火村の推理は
今回もまたお見事である。
思えば、子どもの頃には町中の看板に意味不明な文言を見つけて
不思議に思ったこともあったが、
それをこういうミステリに仕立ててしまうんだから
作家というのはたいしたものだと思う。

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コメント 5

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-20 21:28) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-20 21:28) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-20 21:28) 

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-20 21:29) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-21 21:19) 

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