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問題物件 [読書・ミステリ]


問題物件 (光文社文庫)

問題物件 (光文社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/07/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

主人公の若宮恵美子は、短大時代にヘルパーの資格を取り、
介護関係の仕事を目指したが果たせず、不動産会社へと就職した。

彼女が入社した「大島不動産グループ」は、
創業者の長男・信昭が二代目社長を務めていたが7年前に事故で死亡し、
現在の社長は次男の高丸(たかまる)が務めている。
信昭の遺児・雅弘は難病で寝たきりの状態にあり、
恵美子が与えられた仕事は彼の身の回りの世話をすることであった。

そして1年。雅弘は二十歳となった。
彼のために甲斐甲斐しく働いていた恵美子だったが、
新設された ”販売特別室” への突然の異動が命じられる。
そこは不動産物件へ寄せられるクレーム処理を担当する部署で、
責任者には(名目だけだが)雅弘が充てられ、実働する職員は恵美子1人。

この異動は、雅弘を会社から追放したい高丸社長の画策だった。

恵美子がクレーム処理に失敗すれば、
それがそのまま雅弘の失点に繋がる。
途方に暮れる恵美子だったが、そんな彼女の前に
犬頭光太郎(いぬがしら・こうたろう)と名乗る謎の男が現れ、
様々なトラブルをバッタバッタと解決していくのだった・・・


「居座られた部屋」
取り壊しが決まっている5階建てのマンションで、
最後まで引っ越しを拒否している男・猪俣(いのまた)。
犬頭は、猪俣の居座る ”真の理由” を暴いていく。

「借りると必ず死ぬ部屋」
そこの住人が5人続けて自殺しているという、曰く付きの部屋。
それも服毒、首つり、ビルの屋上から飛び降り、電車へ飛び込み・・・
犬頭は連続する怪死の間に潜む犯罪をあぶり出す。

「ゴミだらけの部屋」
元大手商社のエリートサラリーマン・前島が退職し、
年金暮らしで住んでいる家がいつの間にか堂々たるゴミ屋敷に。
しかしその裏には、ある哀しい理由があった。

「騒がしい部屋」
薬物を使っていると思われる男・高野の部屋で
ポルターガイスト騒ぎが起こる。
しかし犬頭は、騒ぎの裏に潜む大がかりな仕掛けと、
意外な動機を解き明かす。

「誰もいない部屋」
その部屋では、過去3年間で3人の住人が失踪し、
3日前には4人目の住人まで消えたという。
ラストで明らかになるのはけっこう古典的なトリックなんだけど、
本作の雰囲気のせいか、さほど不自然さを感じない。


さて、本作のキモはなんと言っても犬頭光太郎の存在。
単にアタマが切れる探偵と言うだけでなく
腕っ節も強く、常に相手を圧倒してみせる。
およそ物事に動じるということがなく、
どんな人間に対しても ”上から目線” で、
はじめから吞んでかかっている。

常人のレベルを遙かに超えたスペックの持ち主なんだが
ときおり、“超能力” か ”魔法” かとしか思えない
不可思議な能力さえも発動するので、ある意味ホントの ”超人” なのだ。

もっとも、それと並行して彼の ”正体” を
それとなくうかがわせる描写も随所に挿入されてるので、
読者は安心して(笑)犬頭のヒーローぶりを楽しめる。

 まあ、”武闘派のドラえもん” みたいなもんだな・・・(おいおい)。

ファンタジー風味を振りかけたユーモア・ミステリの傑作だ。


雅弘の抱える難病には、新たな治療法が見つかっており、
病状を飛躍的に改善させる可能性がでてきた。
彼の追い落としを狙う高丸が今回の部署を新設したのも、
雅弘が病を克服して表舞台へ出てくることを恐れたからだ。

一方、雅弘の病状が快方に向かえば
恵美子との関係も変わっていくだろう。

本書はシリーズ化されているので、
雅弘と恵美子のロマンスもそこで描かれるのかも知れない。

現在、第二巻も文庫化されていて手元にあるので、近々読む予定。

nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-19 22:33) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-19 22:33) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-19 22:33) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-19 22:34) 

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