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生者の行進 [読書・ミステリ]


生者の行進 (ハヤカワ文庫JA)

生者の行進 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 石野 晶
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/06/05
  • メディア: 文庫
評価:★★★

島田隼人と藤原冬子(とうこ)は1歳違いの従兄妹同士。
家も近所で、幼いころから兄妹のように暮らしてきた。

しかし物心ついたころから、冬子は隼人に対して
強烈(!)な愛情を抱くようになり、
隼人は彼女の振る舞いに悩まされることになる。

隼人の周囲にいる女子はもちろん、男友達まで排除にかかるのだ。
自他ともに認める美少女である冬子は隼人の友人に恋を装って近づき、
相手が本気になったところを手ひどく振って捨て去る。
なんともはや、男心を弄ぶ、とんでもない悪女である。
隼人は何人の男友達、女友達を失ったことか・・・

 美人の従妹にこんなに慕われても、隼人にとって
 冬子は恋愛対象にはならない。
 まあ冬子嬢の過激すぎる性格もあるのだろうが(笑)、
 実はこの二人、隼人の家庭にまつわる、
 ある “秘密” を共有しているのだ。
 そのあたりはおいおい明らかになっていく。

隼人が高校2年生、冬子が1年生になったある日、
病院へかつての友人の見舞いに訪れた隼人。

 その友人は冬子に振られたショックで高校進学を断念、
 さらには交通事故で足を骨折と、なんとも悲惨な人生を送っている。

その病院で隼人は、階段で突如意識を失って
転落しかけた少女・細山美鳥(みどり)を助ける。

彼女は冬子の同級生で、はじめての親友といってもいい存在だった。
意識を取り戻した美鳥は言う。「ドッペルゲンガーを見た」と。

隼人と美鳥を見ていた冬子は、やがて隼人が
美鳥を愛するようになるのではないか、との予感におののくのだった。

やがて隼人と冬子の前に、美鳥にそっくりな人物・スオウが現れる。
そして二人が共有する “秘密” に、
美鳥とスオウも意外な形で関わっていたことも・・・


物語はほぼこの4人のみで進行する。
ちなみに表紙のイラストにある4人がそうだ。
左から美鳥、隼人、スオウ、そして冬子(で、間違いないだろう)。


なんといってもこの物語の推進役は、強烈な個性を放つ冬子さんだろう。
隼人に対するストーカー紛いの執着を除けば
意外にも(失礼!)、料理もうまいし家事もそつなくこなす、
いたって家庭的なお嬢さんだったりする。

 まったく、あの性格を除けば(笑)いい奥さんになれそうで
 隼人の父親など、冬子が息子の嫁になることを
 内心期待しているふしもある(笑)。

隼人も人間的には決して悪くはないんだが、冬子には甘いかなあ。
そこには秘密の共有者という引け目があるのかもしれないが。

何も起こらなければ、このままずるずるといってしまいそうな
二人の前に、突如現れた美鳥とスオウ。

この二人もまた複雑な家庭の事情を抱えていることが
後半明らかになってくる・・・


本書は、この若者4人が過去の軛(主に家族からの)から逃れ、
新たな道へ踏み出すまでが描かれる。
もちろんミステリであるから、そこにはある “犯罪” が
絡んでいるのだが・・・

ラブストーリーとしては、落ち着くところに落ち着く結末かな。
登場人物の描写も、少女漫画的というかライトノベル的というか。
このあたりは好みが分かれるかも知れない。

ミステリとしてはちょっと中途半端かもしれないが、読後感は悪くない。

nice!(3)  コメント(3) 
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コメント 3

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-06-16 22:48) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-06-16 22:48) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-06-16 22:48) 

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