九月の恋と出会うまで [読書・ミステリ]
評価:★★★☆
旅行代理店で働くOL・北村志穂は
2階建てで4部屋しかない小さなマンションへ引っ越した。
1階にはオーケストラ奏者の男性と女医さん、
2階には志穂、そしてさえないサラリーマン・平野。
ある夜、志穂はマンションの壁にあるエアコン用の穴から
男性の声が聞こえてくることに気づく。
穴はあってもエアコンは設置していないので、
外のベランダには何もないし当然ながら誰の姿もない。
"声" は "マンションの隣人の平野" であると名乗るが
現在の平野ではなく "1年後の世界を生きている平野" だという。
"平野" は今後1週間の新聞朝刊の見出しを挙げるが
それがことごとく的中し、志穂は "平野" が
未来の世界から語りかけてきたことを信じるようになる。
出だしはこのようにSF的なシチュエーションから始まる。
裏表紙の惹句には「時空を越えた奇跡のラブストーリー」とある。
昨今、時間を絡めたラブストーリーは流行っているみたいだが
本書は2007年に書かれたもの。
"1年後の平野" は志穂にある頼み事をする。
それは毎週水曜日(志穂の定休日)に、"現在の平野" の後を追い、
その1日の行動を記録すること。
そして "現在の平野" とはなるべく接触しないこと。
とりあえず引きうけた志穂だが、
外回りの営業職をしている平野の行動は平凡そのもの。
しかしときおり見せる不審な行動が気になるが・・・
志穂は "1年後の平野" に、尾行の目的を問うが
彼は言を左右にして理由を明かしてはくれない。
混乱を避けるために、1年後の平野を "シラノ" と
呼称することを決めた志穂だが
"シラノ" との会話を重ねるうちに、
次第に彼に惹かれるものを感じていく。
ここまで読んでくると、志穂とシラノとのラブ・ストーリーなんだな、
と思われるかもしれないが、なかなかそう単純ではないのだ。
平野の尾行を始めて三回目の水曜日。
志穂はその日に限って途中で彼を見失ってしまい、
がっかりしてマンションの自室へ帰るのだが・・・
ここから物語は様相を変え、意外な方向へ転がり出していく。
シラノが命じた尾行の理由とは?
尾行されてる最中の平野がときおり見せる謎の行動とは?
さらに、あることがきっかけで志穂は根本的な疑問を持つ。
シラノは本当に "1年後の平野" なのか? と。
そして、志穂の恋の行方は?
設定こそSFだし、ファンタジー要素もある。
後半に入ると、物語の着地点がなかなか見えずに
やきもきすることになるが、
ラストでは様々な謎が綺麗に解かれて納得の結末を迎える。
梶尾真治やロバート・F・ヤングを持ち出すまでもなく
時間ものとラブストーリーは相性が良い。
本書はそれにミステリ要素を加えて、最後まで読者を楽しませてくれる。
はじドラさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-03-22 00:45)
31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-03-22 00:46)
@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-03-22 00:46)
鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-03-22 00:47)
サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-03-22 22:52)