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笑うハーレキン [読書・冒険/サスペンス]

笑うハーレキン (中公文庫)

笑うハーレキン (中公文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/01/21
  • メディア: 文庫



評価:★★★

主人公・東口は家具職人。

彼には、かつて幼い一人息子を事故で失い、妻とは離婚。
経営していた会社も倒産の憂き目に遭う、という過去があった。

現在はトラックにわずかばかりの商売道具を積み込み、
電話一本で家具の修理を引き受ける仕事を生業に、
荷台で寝泊まりしながら、川辺の空き地で
気の置けないホームレスの仲間たちと、楽しく暮らしている。

そんなある日、奈々恵と名乗る足の不自由な若い女が現れ、
東口に弟子入りを志願する。
それを境に、彼の生活に変化が生じ始める。

やがてホームレス仲間の老人が川底で遺体となって見つかり、
東口のもとには奇妙な家具修理の依頼が舞い込む・・・


伏線もそれなりに張ってあるし、終盤には、
主人公たちの巻き込まれていた状況についての
謎解きもあるんだけど、ミステリっぽさは希薄。

強いて分類すれば、
若干のユーモア風味をまぶした軽めのサスペンス、
といったところかなあ。

本書の読みどころは、そういう物語の "仕掛け" よりも、
東口や奈々恵、空き地の仲間など
心に瑕を負って、社会からこぼれ落ちそうになっている人々が
力を合わせて彼らに降りかかる苦難を乗り越え、
自らの人生の再生するきっかけをつかんでいくところにある。

東口は、最終的には彼らをまとめるリーダー的存在となり、
ラストでは彼もまた、人生をリブートすることを決意する。

読み物としては充分に面白いし
出てくるキャラもみな立っている。

私は特に奈々恵ちゃんがお気に入りだ。
序盤での風変わりな言動から "不思議ちゃん" 系かと思いきや、
徐々に彼女の抱えていた事情が明らかになってくると
感情移入の度合いがじわじわと増してくる。

ただ、この作者だとやっぱりミステリを期待してしまうんだよねえ。
こういう作品もたまにはいいけど、次は本格ものが読みたいなあ。


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mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2016-05-25 21:34) 

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