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剣姫 -グレイスリング- [読書・ファンタジー]

剣姫―グレイスリング (ハヤカワ文庫 FT カ 6-1)

剣姫―グレイスリング (ハヤカワ文庫 FT カ 6-1)

  • 作者: クリスティン・カショア
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/05/20
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

始めに白状しておきます。
この本を買った理由の7割くらいは表紙のイラストでした。
だって可愛いんだもの(←おいおい)。
私、こんな雰囲気の女の子が好みなんだなぁ。

この絵では、背中にかかるくらいロングな黒髪なんだけど
これは序盤だけなんだよなあ。何とももったいないことに
途中でショートカットにしちゃうんだよねぇ。
私は長い方が好きなんだが(←おいおい)。

閑話休題。


左右で異なる瞳の色を持って生まれた者は、長じるにつれて
常人にはない卓越した才能を示すようになる。
人々は彼らを "賜(たまもの)持ち" と呼んだ。

本作のヒロイン・カーツァ姫もまた緑と碧の瞳を持っていた。
彼女の "賜" は、類い希な戦闘能力。
剣も弓も自由自在に使いこなし、格闘戦でも無敵を誇る。

幼い頃からその天分を示したカーツァは、
伯父であるミッドランズ国王・ランダを闇から支えるべく育てられた。
すなわち、王の命に背く者を密かに処罰、
時には粛正さえも行う "暗殺者" として
18歳のこの時までを生きてきたのだ。

しかし、(ランダ王を含めて)諸国の王たちの暴政に苦しむ人々を
見てきた彼女は、ランダ王の嫡子であるラフィン王子の助力を得て
密かに<諮問機関>なる組織を結成、
弱き人たちを助け、守る活動も行っていた。

その<諮問機関>から、島国リーニッドの国王の父・ティーリフが
拉致され、ミッドランズの隣国・サンダーの王都に
囚われているとの情報がもたらされた。

同志たちとともにサンダーの王城に潜入したカーツァは
ティーリフの救出に成功するが、
そこで彼女と同じ "賜" (金と銀の瞳)をもつ青年と出会う。
彼はリーニッドの第七王子・ポオだった。

ミッドランズの王都で再会したカーツァとポオは、
武道における良きライバルとなり、
試合を繰り返すうちに次第に親しさを増していく・・・


王父ティーリフの拉致に隠された陰謀を追っての旅と冒険。
それによって、"人間凶器" として育てられてきた少女が
友情を知り、愛を知って成長してゆく物語だ。

特に、カーツァとポオは、格闘の稽古を通じて
お互いへの思いを募らせていくという、
まさに日曜朝の某変身少女アニメみたいな
「拳(こぶし)で愛を語る」仲になっていく。

本書の一番の魅力は、何と言ってもカーツァというキャラクターだろう。
王子様と結婚してめでたしめでたし、
なあんて結末を真っ向から否定する、なんとも現代的な娘さんである。

「結婚はしない」「子どもは持たない」「束縛されるなんてまっぴら」
愛と結婚とは別ものとすっぱり割り切っているのも、時代か。

もっとも、「結婚」という制度自体を否定しているわけではなく
それ以前に「何者にも束縛されない自由で自立した人間」でありたい、
という思いが彼女にそう行動させているようだ。
同様に「結婚して子どもを産み、家庭を支える女性」という存在も
認めてはいる。ただ、「自分はそうはなれない」と考えているのだ。

ファンタジーの世界のヒロインにも、
いよいよそんな女性像が現れてきたということなのですかね。


とはいっても、本書は三部作の一作目ということなので
彼女のこのポリシーがずっとそのままなのかは不明だ。
どこかの時点で「結婚」という制度と
折り合う点を見つけるのかも知れないし。
でもまあ、一作目のラストまで読んだ感じでは
そうなる可能性はかなり低そうだけど。


物語後半で明らかになる拉致事件の "黒幕" が、
およそこの世界では最強と言えるほど手強く、最凶と言えるほど残忍。
いったいどうしたら勝てるんだろう・・・と思わせるのだけど
ラストはちょっとあっけないかな。

とはいっても、本書は戦闘シーンよりも
上述のようにカーツァの成長の物語がメインなので、
これでいいのかも知れないし、
カーツァをこの "難敵" に勝たせるとしたら、
この方法しかなかったような気もするし。


上にも書いたように、本書は三部作になってるんだけど
残念ながら第二部、第三部はまだ邦訳が刊行されてない。

解説によると、第二部「Fire」は時代を数十年巻き戻し、
過去の出来事が語られているとのこと。

そして第三部「Bitterblue」は第一部の6年後が舞台。
カーツァやポオも登場するので、彼らのその後も語られるのだろう。
Bitterblue とは、第一部の後半から登場する10歳の少女の名で、
終盤では堂々とメインキャラの仲間入りをしてしまう。
第三部は16歳になった彼女が主人公になるのだろう。

第二部はともかく、第三部は読みたいなあ・・・
ハヤカワさん、何とかしてくださいよ。


最後に余計なことを書く。

本書は2008年の発行時にたいへんな評判を呼んだそうで、
ヤングアダルト図書関係の賞をたくさんもらっている。
巻末にその一覧があるのだけど、その中には
「ミソピーイク賞児童書部門」とか
「アメリア・ブルーマー・フェミニズム推奨文芸リスト(18歳以下向け)」
なんてものも入ってる。

でもさぁ、本書の中には
"あーんなシーン" や "こーんなシーン" もあるんだよねぇ。
"18歳以下向け" はともかく "児童書" はないんじゃないかなあ・・・
まあ、おじさんの頭が古いんですかねぇ・・・


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