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宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟 小説版 [アニメーション]

※映画のストーリーに触れています。未見の方はご注意下さい。
※小説版のネタバレもあります。未読の方はご注意下さい。


小説 宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟

小説 宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟

  • 作者: 豊田 巧
  • 出版社/メーカー: マッグガーデン
  • 発売日: 2014/12/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



12月6日公開の同名映画のノベライズ。
公開と同時の発売だったらしいんだけど
近くの大きめの書店を2軒ほど当たったが見つからなかった。

普段から愛用している 7net shopping でも取り扱ってないみたいで
検索しても表示されない。
「まあ、年末に東京に行く用事があるから、その時に買えばいいか」
とか思ってたんだが、先日近所の書店に行ってみたら1冊だけあった。
というわけで、発売より2週間遅れで入手。


著者は本編(「宇宙戦艦ヤマト2199 上・下」)のノベライズと同じ人。
内容も、おおむね映画の内容に沿っている。

でも、本編のノベライズとはかなり雰囲気が異なる。
それはやはり "余裕" じゃないかと思う。

とにかく上下巻2冊、約700ページにTVシリーズ26話分を
収めなければならなかった本編。単純計算で1話あたり約27ページ。
読んでいても「とにかく規定枚数以内に収めないと」という
意識が強く感じられて、窮屈なつくりに思えて仕方がなかった。
イスカンダル到着以後、地球帰還までの部分の
ダイジェスト感も半端ではなかったし。
それでも、一部にオリジナル展開を入れるなど工夫の跡は見られたけど。


対して本書ではどうか。
映画は約110分。単純計算でTV5話分くらいの長さ。
これを約280ページに収めているわけで、1話あたり約56ページ。

同じ長さの話をノベライズするのに、ざっと2倍のページが使えるわけで、
これによって描写や展開に充分な書き込みが出来て、
より "小説らしさ" が増していると思う。

ストーリーについては、大筋では映画版に沿ってはいるが、
異なる部分も随所にある。大きなものは2カ所ほど。


※以下の文章は小説版のネタバレを含みます。ご注意下さい。


一つは映画の冒頭とラストにあった空間騎兵隊・斉藤と土方のシーン。
ここはごっそり削られている。
斉藤の登場を熱望していた人、EDに入る直前の演出で感動した人には
ちょっとガッカリかな。
映画としてのまとまりと、小説としての起承転結では当然異なるだろう。
そのへんを踏まえての構成変更かも知れない。

もう一つは、クライマックスの艦隊戦の部分。
ここはかなり大きな変更点。

まずは最終決戦でのバーガーの立ち位置。
艦隊の指揮は執らず、航空隊のリーダーとして戦闘機で出撃する。
これには理由があるのだが、これは読んでもらった方がいいだろう。
ミランガルにはネレディアが乗っているんだが、
"ヤマト&ガミラス連合艦隊" の指揮はなんと! 古代が執るのだ。

映画でのヤマトの指揮ぶりも見事なんだが、
小説版の古代は艦隊戦の采配にも非凡なものを見せる。
ガトランティス艦隊を翻弄してみせる様子は、
「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリーを彷彿とさせる。
(そういえばアニメ版のヤンは、オリジナルの古代を演じていた
 富山敬さんだったなあ・・・)
まあ、ガトランティス(というか雷鳴さん)が基本的に数で押すタイプで
侵攻パターンを読みやすいってこともあるんだけどね。

真田さんが立案する火焔直撃砲への対策も映画版と小説版では異なる。
こちらの方が対策にかかる手間も時間も少なくて済むので
現実的な対応とも言えるが、"映える絵" として見せづらいかな?
映像で見せるか活字で読ませるかの違いもあるのだろうが
これも比べてみると面白い。

最終決戦で交わされるバーガーとネレディアの会話もあるんだけど
内容もシチュエーションもかなり異なる。
映画版は "泣ける名場面" だったが、
小説版では "思わず頬が緩んでしまう名場面" になってる。

 映画版で感動した人には不満を感じる部分かも知れないが
 これはこれで "あり" だと思う。映画版とノベライズ版、
 「一粒で二度美味しい」って思えばいいんじゃないかな。

映画版でも、ネレディアがバーガーに対して
恋愛感情らしきものを抱いていることが示されていたが、
小説版では、より明確に描かれている。
そのあたりも映画とノベライズの違いを楽しめる所だろう。

また、小説版ではガミラス艦隊が数隻生き残る。
私も映画版での被害が甚大すぎると思ってたので、
この展開は個人的にはとても嬉しかった。


映画版と小説版の差が、著者のオリジナル展開なのか、
それとも脚本段階での設定なのかは不明だが
(実際に製作していくうちに、脚本が変更されたり
 シーンが追加or削除されることは、よくあることらしいし)
そのあたりを想像しながら読むのも一興かも知れない。


ああ、でもこういうものを読ませてもらうと、
やっぱり本編のノベライズはもったいなかったなあと思う。

あの2倍のページがあれば、著者ももう少し
のびのびと筆を運ぶことが出来たんだろうになあ・・・


やっぱりノベライズし直しませんか、マッグガーデンさん。


前にも書いたことがあるんだけど、
いっそのこと作家を26人動員して1話ずつノベライズ。
餅は餅屋で、得意そうな分野を書いてもらうなんていいんじゃない?

たとえば「魔女はささやく」を恩田陸とか
たとえば「七色の陽のもとに」は福井晴敏とか。
3話で1巻くらいにして全9巻くらいで出ないかなあ・・
夢だなあ・・・でもお願いしますよ。


最後に余計なことを一つ。

全般的にとても良くできたノベライズだと思う。
でも、ガトランティスの艦艇が新たに登場するたびに
「八連装速射輪胴砲塔×3、二連装速射砲塔×2、
 対空用八連装高射輪胴砲塔×18云々・・・」って
カタログスペックを延々と書き連ねるのは如何なものか。
まあ、こういう描写こそ大好きだ、って人もいるのかも知れんが
私はちょっと鬱陶しかったかなぁ・・・


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めとろん

mojoさん、こんばんは。

私も初回を見た川口の劇場でこのノベライズを衝動買いしてしまいました。

まだ、ざっと読んだだけですが、本編映画を補足する部分とそうでない物語とがあって、面白かったです。

バーガーはやっぱり戦闘機に乗るのが似合いますよね!

小説版で唯一不満なのは、ラストのネレディア...
うーん...「あんなこと」いうキャラじゃないと思ってたんですが(笑)

彼女をメルダの「進化形」のように見てたんで。

メルダが「古代! バカなんだから、もう...」なんて言いそうにないと...
by めとろん (2014-12-27 00:01) 

mojo

めとろんさん、こんばんは。
コメント、ありがとうございます


>私も初回を見た川口の劇場でこのノベライズを衝動買いしてしまいました。

私も映画館に行くたびに探してたんですけどね・・・
本編のノベライズは置いてあったんですけど、
残念ながらコレはありませんでした。


>本編映画を補足する部分とそうでない物語とがあって、面白かったです。

記事にも書きましたけど、ページに余裕があるせいか、
映画に出てこなかった部分がけっこうありましたよね。
それもノベライズを読む楽しみの一つですから、
そういう点でもこの小説版は買ってよかったと思いました。


>バーガーはやっぱり戦闘機に乗るのが似合いますよね!

でも、ブリッジでただ一人、舵輪を握って
炎の中に仁王立ちするのもまた "絵になる" んですよねえ・・・
そのへんも、映像と活字での "演出" の違いなのかも知れません。


>小説版で唯一不満なのは、ラストのネレディア...
>うーん...「あんなこと」いうキャラじゃないと思ってたんですが(笑)

私はあんまり違和感は感じませんでした。
メリアに続いてバーガーまで失ってしまいそうな時に
今まで秘めていたものが思わずあふれてしまった・・・って考えると
なんだかとっても可愛いじゃないか・・・って思いました。
それに対して、バーガーが返した言葉がまた変に "気が利いて" いて
思わず大笑いしてしまった私でした。


>彼女をメルダの「進化形」のように見てたんで。
>メルダが「古代! バカなんだから、もう...」なんて言いそうにないと...

いやあ、メルダが「バカ」って言うなら、
相手はぜひゲール君にして欲しいですね。
もっとも、彼女が言うとニュアンスが変わってしまいますが(笑)

「相変わらずバカな男だな、お前は」
「こっ、小娘の分際でバカとはなんだ、バカとは!
 総統閣下に言われるならともかく、
 お前なんぞにバカと言われる筋合いはないぞ!」

ふっと思ったのですが、メルダとサーベラーの対面も見てみたいですね。
片や大帝の寵愛を一身に集める丞相閣下。
片や航宙艦隊総司令の御令嬢。
案外、波長が合うような気もするし、
逆に徹底的に水と油で反撥しそうな気もするし。
さて、どっちでしょうかね?
もし続編ができれば、これもお楽しみになりますかね・・・


ありがとうございました。
また、よろしくお願いします。

by mojo (2014-12-27 18:24) 

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