ストーンエイジCITY アダム再誕 [読書・SF]
評価:★★★
「-COP」「-KIDS」と続いてきた近未来バイオSFの第三巻、
現代人離れした超常の身体能力を持つ、
元コンビニCOPの滝田が活躍する、三部作の完結編である。
巨大なみずほ中央公園内で独自のコミュニティを形成している
ストリート・チルドレン集団<山賊>。
前作のラスト、滝田と<山賊>は、彼らを根絶やしにしようとする
巨大バイオ企業・ESテックの繰り出した掃討部隊を退けたものの、
滝田は敵の手に落ちてしまった。
それから4年。
ESテック傘下のコンビニチェーン・4Uが販売するPB商品、
ミネラルウォーター「ファウナ」の愛飲者が謎の変死を遂げる。
「ファウナ」の謎を追う刑事・米城は、
ESテックの巡らせた新たな陰謀にぶちあたる。
ホルモンの空中散布による人間の心理操作、
ウイルスを用いた人体への遺伝子導入・・・
米城たちは、ESテックからの内部告発者を得るも、
彼らに接触した者はことごとく消されていってしまう。
ESテックは熱海沖に浮かぶリゾート・初島を島ごと買収し、
そこに本社機能を集中させ、地下には巨大な研究施設を建造していた。
その施設の奥深くに潜み、ESテックを影で支配するのは
"アダム" と呼ばれる謎の人物だった。
滝田と、"アダム" 。
高度に発達した遺伝子操作テクノロジーによって生み出された、
二人の "超人" が、人類の未来を賭けて雌雄を決する、という
通常なら、いやが上にも盛り上がる話のはずなんだが、
ストーリーは言ってみればゆるやかに、悪く言えば坦々と進む。
米城たちによるESテックの告発も、滝田の初島からの脱出も
(まあアダムがあえて見逃した、ってところもあるんだが)
施設への強制捜査の根回しも、なんだかすいすいと進んでしまう。
普通に考えたら、初島の研究施設を巡る攻防が
クライマックスになりそうなんだが、
総ページ数が文庫で650ページほどもある中で、
ラストのアクションシーンが数十ページしかないのは
ちょっと、どころかかなり淋しい。
福井晴敏あたりが書いたら、自衛隊の特殊部隊が突入して
爆発・炎上シーンが200ページくらい延々と続くんだろうけど。
アダムが最終決戦(?)の場に選んだのもちょっと意外な場所で、
まあ、ストーリー上意味がないわけではないんだけど
かな~り地味なところで滝田とアダムは最後の戦いに臨むことになる。
まあ、第一巻「-COP」のクライマックスみたいに、
ド派手に描くこともデキたんだろうけど、
ここは敢えてSF的なテーマであるところの
「種としての人類の未来」とか「遺伝子操作の極限」とか
「創世神話の再生」とかを前面に出したかったのかな、とも思う。
(もちろん私の解釈が大間違いな可能性も多分にあるが)
滝田とアダムにしても、個人的な感情よりも
遺伝子の持つ "ベクトル" の違いから
「目指す未来」が必然的に異なってしまう、
みたいなところが対立の出発点だったりするし。
全般的にキャラの扱いがあっさり気味なのも気になった。
たとえば米城も、ラストでの扱いがいまひとつ不満だし
滝田の "その後" についても同様。
(本人はあれで幸せなのかも知れないけどねぇ。)
「-COP」→「-KIDS」→「-CITY」へと進むにつれ、
アクション度は減少する代わりにSF度は増していく、
(ページ数も100ページずつ増えていくんだが・・・)
そんなつくりになっているように思う。
これをどう評価するかは人によって異なるだろうけど
私はやっぱり「-COP」がいちばん面白かったなあ。
だから続巻にもそれを期待したんだけど、
私の好みと作者の目論見とはかなりずれていたみたいだ。
思い起こせば、この作者の長編「ハイドゥナン」('05)も、
文庫で全4巻という大作で、最初は面白かったんだけど、
後半になるほど私の好みからは外れていったよなあ。
ということは、私の好みは
10年前と変わってなかったってことか?
makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-08-25 22:37)