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NOVA 2021年 夏号 [読書・SF]


NOVA 2021年夏号 (河出文庫)

NOVA 2021年夏号 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2021/04/03
  • メディア: 文庫

評価:★★☆


 書き下ろしのSF短編を10作収めたアンソロジー。

 目次のページに、各作品について書かれた "ひと言" があるので、それを掲げます(< >で囲んだ部分がそれ)。


「五輪丼」(高山羽根子)
 <2020年、僕の入院中に、東京でオリンピックが開催されたよね?>
 2020年の夏、世間から隔絶された三ヶ月の入院を終えた "おれ" は退院した。世間ではオリンピックが開催されたらしい、という情報が流れているが、"おれ" にとってはどうにもあやふやだ。果たしてオリンピックは開催されたのか?
 間接的な情報だけが肥大化していくと、事実が不明になってしまう・・・という現代を皮肉った作品、なのだろうなぁ。


「オービタル・クリスマス」(池澤春菜 堺三保:原作)
 <宇宙ステーションV3が放つ、優しい奇跡。堺三保第一回監督作品原作、池澤春菜の初小説。>
 宇宙ステーションに月から密航してきた少年。彼の母親は先週病死していた。離婚した父親が住む地球に降りようとしていたらしいが、父親がいた成田空港は核テロ攻撃を受けていた・・・
 父親の消息をつかむためにステーション・クルーのアリが奮闘する、ちょっといい話。池澤春菜さんは声優にして文筆家のようです。


「ルナティック・オン・ザ・ヒル」(柞刈湯葉)
 <丘の上の兵士は地球が回るのをただ見ていた。ギャグ漫画みたいに間抜けな戦争が続いている。>
 月と地球が戦争状態になる。月側の兵士二人は地球を見上げながら、月面上で過酷だがマンネリ化した戦闘を繰り返していたが・・・


「その神様は大腿骨を折ります」(新井素子)
 <「あの、あたしは山瀬メイって申します。"やおよろず神様承ります" って仕事をしてまして」>
 『NOVA 2019年 春号』掲載の短編がシリーズ化されたみたい。困っているひとに、"ぴったりな神様" を紹介して回るという山瀬メイさん。今回はブラック企業に勤める井上くんに、"俺がんばるな" の神様をオススメする話。
 新井素子さん、1977年に高校2年生で作家デビューというスゴい人。なのでキャリアは40年以上。でも作風というか作品の雰囲気はずっと変わらない。これはたいしたもの。


「勿忘草 機巧のイヴ 番外編」(乾緑郎)
 <「私のお姉様になってくださいまし」失われた手紙が生んだ帝都の浪漫。>
 パラレルワールドの江戸時代にアンドロイド・伊武(イヴ)が造られた・・・というスチームパンク的SFシリーズ・・・といっても、本編読んでないんだよね。長編で3冊あって、みな手元にあるんだけど。近いうちに読もう(笑)。


「自由と気儘」(高丘哲次)
 <大戦時に日本が開発したゴーレムに課せられた最後の使命は、猫の世話だった。>
 連合国が投入したゴーレム兵によって、大戦に敗れた日本。国内でもゴーレム兵の研究は進んでいたが間に合わず、完成したのはわずか一体のみ。それが本作の主人公兼語り手の "私" だ。
 大戦後、"私" は製造者・川田隆二に仕えていたが、彼は5年後に病死する。その遺言で、"私" は川田の財産の管理を任されるが、それには彼が生前に飼っていた猫・小雪の世話も含まれていた・・・
 猫とゴーレムの交流を描くという、ちょっとファンタジーがかってはいるが、いわゆるロボットSFの一種だろう。機械仕掛けではなく、「ゴーレム」という神秘的な要素をうまく取り入れてるのがミソか。


「無脊椎動物の想像力と創造性について」(坂永雄一)
 <市内全域を無数の蜘蛛の巣に覆われた古都、京都の全面的な焼却が決定された。>
 遺伝子操作された蜘蛛が大学の研究室から逃げ出したことによって、京都全域が蜘蛛の巣に覆われる。その中心となったかつての大学の廃墟に、当時は学生で今は研究者となった者たちが調査に入ることになって・・・
 往年の円谷特撮TV(『ウルトラQ』や『怪奇大作戦』)みたいな雰囲気を感じさせる破滅SF。


「欺瞞」(野崎まど)
 <最も高等かつ極めて高尚な精神を獲得した神に等しい生命の一個体への愛の手紙。>
 ごめんなさい。私はこの作品が全く理解できませんでした。


「おまえの知らなかった頃」(斧田小夜)
 <遊牧民の語り部と天才プログラマーの間に生まれた少年よ、おまえの母の成した秘密を語り聞かせよう。>
 競技プログラミングの世界で天才と謳われたヒロインは精神を病み、リハビリを兼ねてチベット自治区の精密機械再生工場で働き始めるが・・・
 ところどころよく分からないが(笑)、ハッピーエンドらしいので良しとしよう(おいおい)。


「お努め」(酉島伝法)
 <ランタンの灯る居室を出、果てしない廊下を巡り、今日も食堂へ。美食に舌鼓を打ち続ける男の任務。>
 毎日、居室と食堂を往復して美食を食べるだけの男。彼は何のために生きているのか?
 十年一日のような平穏な序盤から、ラストは大規模なカタストロフに突入する。うーん、わかったような、わからないような(笑)。



タグ:SF
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