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烏百花 白百合の章 [読書・ファンタジー]


烏百花 白百合の章 (文春文庫 あ 65-10)

烏百花 白百合の章 (文春文庫 あ 65-10)

  • 作者: 阿部 智里
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/05/09
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 異世界・山内(やまうち)を舞台にしたファンタジー、「八咫烏(やたがらす)」シリーズの外伝、第2巻。短編8作を収録。


「かれのおとない」
 北領に住むみよしの長兄・茂丸(しげまる)は武勇に優れ、長じては勁草院を経て山内衆(近衛隊)となった。しかしその兄の訃報が伝えられる。使者としてやってきたのは兄の友人・雪哉(ゆきや)だった・・・


「ふゆのことら」
 北領・風巻郷(しまきごう)の郷長の息子・市柳(いちりゅう)は、"北領最強" と謳われるほどの剛の者。しかし隣の垂氷郷(たるひごう)の次男・雪哉が若宮殿下の側仕えになると聞き、心中穏やかでない。
 しかし北領で行われる武術大会の日、その雪哉が市柳の前に「手ほどきしてほしい」と云って現れる・・・


「ちはやのだんまり」
 山内衆の一人、千早(ちはや)は、目の不自由な妹・結(ゆい)を溺愛していた。その結が、「将来を考えている人」がいると云って連れてきたのは、見目も態度も悪い男シン。仕事は門番だというのだが・・・


「あきのあやぎぬ」
 弱小貴族の次男坊だった夫が多額の借金を残して亡くなった。2人の子を抱えた妻・環(たまき)は、やむなく西本家の次期当主・顕彦(あきひこ)の十八番目の側室となることを決意するが・・・


「おにびさく」
 登喜司(ときじ)は鬼火灯籠の職人である。大貴族西家(さいけ)の「お抱え」だった養父のもとで修行をしていたが、なかなか認めてもらえない。そして二十歳を超えて焦り始めた頃に養父が急逝、仕事が一気になくなってしまう。
 そんなとき、皇后陛下が "飾り灯籠" を求めているとのお触れが廻り、一念発起した登喜司は灯籠を作り始めるが・・・


「なつのゆうばえ」
 八咫烏の一族を統べる宗家・金烏(きんう)のもと、山内を分割統治する四家。その中で最大勢力を誇る南家(なんけ)に生まれた姫・夕蟬(ゆうぜみ)は、皇后になるべく育てられる。しかし家中には競争相手となる姉妹もいる。それは南家当主の座について同様で、暗殺をも辞さない陰謀が渦巻く。そんな権力闘争の中を生き抜いていく夕蝉の半生が綴られる。


「はるのとこやみ」
 東家(とうけ)のもとで楽人見習いとして竜笛(りゅうてき)を学ぶ双子。弟の倫(りん)は師匠の賞賛を浴びるが、兄の伶(れい)は自分の才のなさに悩んでいた。
 そんなとき、若宮殿下の妃選びが行われることになった。四家からは、それぞれ選りすぐりの姫が送り込まれる。
 その東家の代表となる姫を決める席において、兄弟は見事な長琴(なごん)の演奏を聴く。弾いていたのは、東清水(ひがしきよみず)家の姫、浮雲(うきぐも)だった・・・
 作中の描写を読む限り、長琴はピアノを模した楽器のようだ。


「きんかんをにる」
 奈月彦(なつきひこ)とその妻・浜木綿、そして幼い娘・紫苑(しおん)の宮の、ある日の風景を描く。文庫でわずか20ページほどだが情報量は多く、不穏な気配も半端ない。


 大長編シリーズのメインストーリーには絡まないけど、山内には貴族も平民も多数暮らしていて、そんな彼ら彼女らの哀歓を垣間見るエピソード群にくわえ、レギュラーキャラの意外な過去を知ることができるのも楽しみか。
 本編では闇落ちしてる(ように見える)雪哉くんは、少年時代から性格が悪かったんだね、って納得したり(笑)、怖い "あの人" にはこんな過去があったんだ、って驚かされたり。

 私のお気に入りは「おにびさく」と「はるのとこやみ」かな。



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