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清里高原殺人別荘 梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション2 [読書・ミステリ]



評価:★★★★


 シーズンオフの冬を迎えた清里高原。ある別荘に5人の男女が忍び込む。ここで4日間を過ごすためだ。しかし無人のはずだったそこには意外な先客が。
 そして、総勢6人となった彼ら彼女らの間で殺人の連鎖が始まる。刺殺、毒殺、撲殺・・・姿なき殺人鬼は、外部の者か、別荘内に潜むのか、それとも彼らの中にいるのか・・・


 冬の清里高原。シーズンオフを迎えて閑散としているリゾート地に建つ二階建ての別荘(ビラ)は、金融業者・川口光栄、通称 "川光" の持ち物だ。資産家であり、インドの美術・工芸作品の蒐集家としても知られている。

 そこに5人の男女が忍び込んだ。三沢義信、勝浦由起夫、瀬戸ルリ子、高森博、呉(くれ)浩二。みな同じ大学の学生だ。その中で、最年少の義信が視点人物となって語られていく。

 無人のはずだった別荘には若い女性の先客がいた。川光の娘である川口秋江だった。5人は彼女を軟禁状態に置き、予定の4日間を過ごすことにする。

 ストーリーの進行とともに明らかになってくるのは、5人は何らかの犯罪行為に手を染め、警察から逃れて潜伏するためにここにやってきたこと。首謀者は沢木という男で、彼らとは別行動をとっており、毎日電話で連絡をしてくること。

 ちなみに本作の初刊は1988年なので携帯電話は登場しない。沢木がかけてくるのも固定電話である。携帯電話が一般に広く普及するのは90年代に入ってからだ。

 この別荘は、3年前に川光が息子・光一のために建てたものだという。しかしそれにしては窓が小さく、数も少ない。しかも内側からは開けられないという特異な構造を持つ。まるで誰かを閉じ込めるようにしてあるみたいではないか。

 そして5人が到着した夜、一人目の犠牲者が発生する。高森が何者かにナイフで刺殺されたのだ。そして第二、第三の殺人が起こる・・・

 折からの降り出した雪によって別荘の周囲は覆われ、外部からの出入りは不可能に思えた。犯人は別荘内部のどこかに隠れ潜んでいるのか、それとも彼らの中にいるのか・・・


 いわゆる "雪の山荘" タイプのクローズト・サークルもの。そこに外部にいる沢木の存在、さらに別荘自体が持つ "秘密" がからみ、重層的な謎が構成されている。

 もちろん最後にはすべての謎は解明されるのだが、ここで大きなサプライズがある。おそらくほとんどの読者の予想の範囲を超えたものだろう。
 ネタバレになるから書けないのだけど、私もいろんな "どんでん返し" ミステリを読んできたが、このパターンはいままで読んだことがない。いやはや作者の発想の豊かさには脱帽だ。

 哀しみと破滅の予感が漂うラストシーンまで、作者の超絶技巧に翻弄される作品だ。



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