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ミステリと言う勿れ [映画]



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 まずは概要。映画のHPからの引用です。

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 天然パーマがトレードマークで友達も彼女もいない、カレーをこよなく愛する大学生の主人公・久能整(くのう・ととのう)の、時に優しく、時に鋭い魔法のようなお喋りだけで、いつの間にか登場人物たちが抱える様々な悩みも、事件の謎までも解かれてしまうという新感覚ミステリー
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 そして映画のあらすじ。こちらも映画のHPからの引用。

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 天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整[菅田将暉]は、美術展のために広島を訪れていた。そこで、犬堂我路(いぬどう・ガロ)[永山瑛太]の知り合いだという一人の女子高生・狩集汐路(かりあつまり・しおじ)[原菜乃華]と出会う。
「バイトしませんか。お金と命がかかっている。マジです。」
 そう言って汐路は、とあるバイトを整に持ちかける。それは、狩集家の莫大な遺産相続を巡るものだった。
 当主の孫にあたる、汐路、狩集理紀之助(かりあつまり・りきのすけ)[町田啓太]、波々壁新音(ははかべ・ねお)[萩原利久]、赤峰(あかみね)ゆら[柴咲コウ]の4人の相続候補者たちと狩集家の顧問弁護士の孫・車坂朝晴(くるまざか・あさはる)[松下洸平]は、遺言書に書かれた「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」というお題に従い、遺産を手にすべく、謎を解いていく。ただし先祖代々続く、この遺産相続はいわくつきで、その度に死人が出ている。汐路の父親も8年前に、他の候補者たちと自動車事故で死亡していたのだった・・・次第に紐解かれていく遺産相続に隠された<真実>。そしてそこには世代を超えて受け継がれる一族の<闇と秘密>があった――― 。
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 ちょっと捕捉しておくと、狩集家の当主には4人の子がいたが、8年前の交通事故で一度に全員が死んでしまう。その4人にはそれぞれ子が1人ずついた。
 つまり今回の遺産相続は、当主の孫4人によって争われることになる。ちなみに、8年前の事故で一族を乗せた車のハンドルを握っていたのは汐路の父・弥(わたる)[滝藤賢一]だった。
 そして、遺言書に書かれた「お題」を解いた1人だけが全ての財産を手に入れることになる。まあ現実の相続では、たとえ遺言状にそう書かれていたとしても、遺留分とかがあって1人で独占することはできないのだが、その辺はミステリの約束事と割り切りましょう。


 まず最初に断っておくと、私は原作は未読です。とりあえずTVシリーズは全部見ましたが、以下に続く文章では原作を読んでる方からするとトンチンカンなこと、見当外れなことを書いてるかも知れません。

 ミステリマンガとしてとてもよくできている、という評判は耳にしていました。だからTVシリーズは全部録画してあったのですが、それっきりすっかり忘れていました(おいおい)。
 映画版の公開が近づいてきて、録画してあったことを思い出し、慌てて見はじめたのが8月の下旬くらいから。まあなんとも付け焼き刃で、いわゆる「にわか」そのものです。

 そのTVシリーズは、とても良かった。特に第1話が秀逸でした。ストーリーのほとんどが取調室での会話劇で進行するという、小説ではよくあってもドラマではほとんど見ないシチューエーション。探偵役としての久能の最大の武器が "言葉" であることを端的に示すエピソードで、シリーズの ”つかみ” は充分。
 ミステリとしての出来ももちろん素晴らしい。特筆すべきは、真相が分かった後にさらにもう一段のひねりを用意していて、それがまた、ドラマに深みを添えている。いやはやたいしたものです。


 さて、そんなTVシリーズを受けて製作された映画版はどうだったのでしょうか。
 結論から言うと、TVシリーズでファンになって「また『ミステリと言う勿れ』の世界に浸りたい」という人の期待には充分応える作品になっていたと思います。
 もっと言えば、近い将来に製作される(であろう)TVの第二シリーズの、壮大な ”前振り” としても充分な出来になっているでしょう。


 では一本の映画としてはどうか。
 正直なところ、観終わった直後の感想は「面白かったけど、映画にするほどの内容かな」でした。
「番組改編期によくやってるTVスペシャルとかの枠でやっても良かったんじゃないかなぁ。確かに地方ロケを行ったり、ギャラが高そうな俳優さんを起用したりとかしてるけど、TVの枠で作れない作品ではないんじゃないか・・・」と思ったわけです。

 でも、ミステリとしての側面を考えたらちょっと考えが変わりました。
 今回の事件、犯人(というか怪しげな人物)は、割と早く見当がついてしまいます。製作する側もあまり隠す気はないみたいです。
 ちなみに、配役から犯人の見当をつけられないように、メインとなる登場人物にはそれなりに有名な俳優さんが何人も起用されてます。

 話はそれますが、昔つくられたアガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』(1974年)や『ナイル殺人事件』(1978年)は、”オールスターキャスト” がウリでした。これは観客を呼ぶためでもあったけど、配役で犯人が分からないようにするためでもあったはずです。

 この映画版『ミステリと言う勿れ』では、犯人の正体よりも、事件の背景に重点を置いているように思えます。
 ネタバレになるのであまり書けませんが、いくら地方の旧家とはいえ、21世紀、それも令和のこの時代に「いくらなんでもこれはないだろう」的な事情が描かれます。ほとんど伝奇ホラーなレベルで、本家の横溝正史ですらそこまではやらなかっただろうという。

 でも、「だからこそ映画にしたのかな」とも思いました。
 お茶の間のTVで観たら「えーっ」てなってしまうような描写でも、映画館の暗闇の中でスクリーンを注視するという ”非日常な環境” に置かれたら、受け容れてもらえ易くなるのではないか。
 いささか荒唐無稽な内容を、観た人に納得してもらう ”装置” として、映画館という ”場” が必要だった、ってのは考えすぎですかねぇ・・・


 もっといろいろ書きたかったんだけど、もうけっこうな分量を書いてきたので、配役について、あとちょっとだけ書いて終わりにします。

 久能整役の菅田将暉さんは、もうすっかり役を自分のものにしましたね。もう彼以外の配役は考えられないでしょう。
 ヒロインとなる狩集汐路は原菜乃華さん。『すずめの戸締まり』でのすずめ役で知りましたが、実写でお目にかかるのは丸亀製麺のCM以来かな。可愛いけど、気が強くて口が悪い(笑)という、なかなか個性的なお嬢さん役を好演されてます。汐路さんには、ぜひ第二シリーズで再登場してほしいなぁ。
 その汐路の父親役の滝藤賢一さん。登場場面は少ないけど、彼のシーンではちょっと涙腺がゆるんでしまいました。トシのせいか ”親子の情愛” には弱いんですよねぇ・・・
 あと、「松坂慶子の無駄遣い」を感じました(笑)。


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