SSブログ

Another エピソードS [読書・ミステリ]


Another エピソードS(角川文庫版) Another

Another エピソードS(角川文庫版) Another

  • 作者: 綾辻 行人
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/06/18

評価:★★★★


 1998年5月。26歳の賢木晃也(さかき・てるや)は死んだ。しかし彼は "幽霊" となって目覚めた。そして、なぜか彼の死が家族によって隠蔽されていることを知る。
 そして7月。賢木は一人の少女と "再会" する。彼女の名は見崎鳴(みさき・めい)。彼女は幽霊である賢木の姿が "見える" ようだ。彼女と共に賢木は自分の死の真相を探り始める・・・


 夜見山北中学校3年3組には、何年かに一度、クラスの関係者に大量の死者が出るという "災厄" が発生する。そしてそれが "起こる年" だった1998年を描いたのが長編『Another』だ。
 その終盤、見崎鳴は一週間ほど夜見山を離れていた。本書は、その間に彼女が遭遇した事件を描いたもの。


 語り手の賢木晃也は26歳の青年。両親が遺した〈湖畔の屋敷〉で一人暮らしをしている。姉の月穂(つきほ)は最初の結婚で息子・想(そう)をもうけたが夫と死別。その後、比良塚修司(ひらつか・しゅうじ)と再婚し、娘・美礼(みれい)が生まれた。

 1998年5月。賢木は屋敷の中で死亡するが、その2週間後に "幽霊" となって目覚めた。
 自分の死亡時の記憶は曖昧だが、修司と月穂が賢木の死を隠蔽しているらしいことを知る。当然、葬儀も遺体の火葬も行われていない。幽霊となった賢木は自分の死体を探し始める。

 そして7月。賢木は1年前の夏に知り合った少女と再会する。彼女の名は見崎鳴。オッドアイの彼女には、賢木の姿が "見える" ようだ。
 2人は一緒に賢木の死体を探し始めるのだが・・・


 幽霊による一人語りという異色作だが、随所に『Another』とのつながりが示される。
 例えば賢木自身がかつては夜見山北中学校の3年3組で、『八七年の惨事』と呼ばれるバス事故の生き残りだった。それ故に「夜見山の災厄」現象の影響は賢木自身にも及んでいた。
 このあたりは『Another』を読んでおかないと理解できないだろう(前作を読まずに本書を読む人はまずいないとは思うが)。

 基本はホラーなのだけど、賢木の周囲には彼の死の隠蔽以外にも不可解な事象が発生しており、ミステリ要素も充分。
 「夜見山の災厄」関連で、関係者に起こる特異な現象は前作で示されており、それも踏まえた前提で真相が解明されていく。だから "特殊設定ミステリ" の一種ともいえるだろう。

 そして、相変わらず鳴さんはミステリアス。彼女の人物造形が本シリーズ最大の魅力なのは間違いないだろう。
 本書は『Another』事件の終了後、鳴が榊原恒一くんに「夜見山にいなかった一週間」の出来事を語る、というシーンから始まるのだけど、彼女の言葉の端々にいろいろ思いを馳せて翻弄されてしまう恒一くんがいちいち可愛い(笑)。


 時系列歴には『Another』のスピンオフというか外伝なのだが、本作に登場する比良塚想くんが次作『Another 2001』の主役らしいので、続編ともいえる。


 ちょっと先走ると、作者は『Another 2001』に続く作品(完結編らしい)として『Another 2009』を予告している。
 ならば、ひよっとするとその主役は想くんの妹の美礼ちゃんかもしれない。年齢的にはその頃に中学3年生になっていそうだから・・・



nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント