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宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー [読書・その他]


博奕のアンソロジー (光文社文庫)

博奕のアンソロジー (光文社文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/02/04
  • メディア: 文庫

評価:★★☆


 「博奕」(ばくち)をテーマにしたアンソロジー。いわゆるギャンブルに限らず、広く "賭け事" を対象にしている。賭けるものも現金に限らず、いろいろだ。


「獅子の町の夜」(梓崎優)
 主人公の "僕" はビジネスマン。仕事で訪れたシンガポールで日本人の老夫婦と知り合う。その午後、"僕" は夫人とディナーのデザートを巡って賭けをすることに。結果によっては夫と別れると彼女は云う。
 夫人を思いとどまらせるために、"僕" は彼女よりも先にデザートが何なのか突き止めようと推理を巡らす・・・
 ホテルのレストランでのディナーなんて、食べたことあったかな? そのせいか、オチの意味が理解できるまで時間がかかった(おいおい)。


「人生ってガチャみたいっすね」(桜庭一樹)
 2019年6月。ルームシェアしている3人の若者の会話から始まる。続いて2020年10月のある会社での情景が描かれる。そして改めてこの2つの時間の間に何があったのかが語られていく。それはなかなかショッキング。そしてラストはちょっぴりSFチック。
 紹介が難しいのだが、こういう話は嫌いじゃない。


「開城賭博」(山田正紀)
 時代は慶応4年(1868年)。官軍が江戸城を包囲し、総攻撃が始まろうとしていた頃。
 幕府側の勝海舟が、官軍指揮官・西郷隆盛を相手に、江戸城明け渡しの条件を賭けて博奕の勝負をするという話。
 こういうことを思いつくんだねぇ、流石は山田正紀。


「杭に縛られて」(宮内悠介)
 1998年。主人公の "わたし" はアフリカのエリトリアにいた。しかし隣国のエチオピアがエリトリアに対して宣戦布告したため、急遽国外への脱出を迫られる。
 しかし乗り込んだ貨物船はオンボロの老朽船。紅海へ出港したはいいが、座礁してしまい沈没の危機に。乗員乗客総勢20人に対して、救命ボートは8人乗り。誰がボートに乗るかの "くじ引き" が始まる・・・
 深刻な事態なのだが、ユーモラスな語り口で喜劇調で進むのがいい。


「小相撲」(星野智幸)
 一時期、大相撲が "八百長" だと騒がれた時期があったが、本作はまさに相撲が "賭博" の対象になっている世界の物語。
 さながら競馬のごとく、客は取り組みを選んで賭ける。ただし、その際には相撲賭博師という "プロ" を通さないといけない・・・
 設定的には面白いのだけど、相撲協会から訴えられないのかしら?


「それなんこ?」(藤井太洋)
 ITエンジニアの "わたし" は、故郷の奄美大島に戻って墓参りをする。そこで出会った少年に、薩摩伝来の賭け事 "ナンコ遊び" にまつわる過去の想い出を語り始める・・・
 うーん、作中の "ナンコ遊び必勝法" の理屈が、いまひとつ分かりませんでした。自分のアタマの悪さにガッカリ。


「レオノーラの卵」(日高トモキチ)
 異世界を舞台にしたファンタジー。町の工場で働く若い娘・レオノーラが産んだ卵が男か女か賭けないか、というところから始まる。
 この作品、他のアンソロジーでも読んだので、今回が再読。でも内容がよく分からない。
 例えばレオノーラの働いている工場のことを「工場長の甥の叔父が工場長を務めていた工場」と記述してる。
 よーく考えれば、最初の "工場長" と途中の "工場長" が別人の可能性もあるよなあ、って思えるのだが、とにかく全編がこんな感じで、読んでいてやたら疲れてしまい、ストーリーが全くアタマに入ってこない。うーん。


「人間ごっこ」(軒上泊)
 売れない役者の岸川は劇団を辞めてしまうが、妻もまた彼を見限って家を出ていってしまう。9年後、場外馬券場の警備員をしていた岸川は、意外なところで妻と再会するが・・・
 岸川の描き方が、もうこれ以上のダメ人間はなかなかいないのではないかと思わせる。そんな男が終盤に至って変貌する。ひとまずは物語にけりがつくけど、先は分からない。
 岸川くんの「明日はどっちだ」(笑)。


「負けた馬がみな貰う」(法月綸太郎)
 200万円の借金を抱えたフリーター・瀬川は高額報酬に惹かれて、ある心理実験にモニター参加する。それはギャンブル依存症治療プログラムの一種で、彼に課せられたミッションは「数週間から数ヶ月の間、競馬で負け続けること」。すなわち、毎日すべてのレースで "外れ馬券を買い続ける" ことだった・・・
 ラストで "実験" の様相が一変するのも驚きだが、さらにひとひねり。これがまた現代ならではのオチ。


「死争の譜 ~天保の内訌~」(冲方丁)
 ちなみに "内訌"(ないこう)とは内輪もめのこと。
 江戸時代、碁所(ごどころ)という役職があった。寺社奉行の管轄の公職でもあり、当然ながら当代最高の碁打ちが就くものとされた。
 その碁所の座を巡っての、名人たちの戦いが描かれる。表だったものだけでなく、水面下の暗闘めいたものまで含めて。
 当時は将棋よりも囲碁のほうが格が上だったみたいで、碁所を巡って文字通り命を賭けた男たちの執念が凄まじい。

 私は囲碁はできないが、将棋はちょっと知ってる。小学校の頃、覚えたばかりの将棋で父の知人と対戦したことがある。当然ハンデをもらい、相手は飛車角落としどころではない、王と歩だけしか持たなかった。それなのに、コテンパンに負けてしまったんだから・・・まあそれも今ではいい思い出だが(笑)。


 思い起こせば、私自身は賭け事はほとんどしてこなかったなぁ。強いていえば、何年かにおきに、宝くじを買ってたことくらいかな。結果は、6000円分買って3600円当たったのが最高。当然ながら赤字だ。
 まあ、私が自由に使える金は、みんな本と酒に注ぎ込んでるので、そもそもギャンブルに回せる資金が無いのだが(笑)。



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