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ブラウン神父の不信 [読書・ミステリ]


ブラウン神父の不信【新版】 (創元推理文庫)

ブラウン神父の不信【新版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/05/21
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 本書の初刊は1926年。いわゆる "古典的名作" と呼ばれる作品集。丸顔で小柄で不器用なブラウン神父が探偵役として活躍する、全5巻シリーズの3巻目だ。

 『童心』『智恵』に続く3巻目だけど、前巻からは12年経っている。巻末の解説にはそのあたりの経緯が書かれているけど、本書の歴史的な意義は変わらないだろう。


「ブラウン神父の復活」
 夜道を歩いていたブラウン神父が、何者かに襲われ、医師によって死亡が確認される。しかし葬儀の最中に、棺の中のブラウン神父が息を吹き返す・・・
 この一連の騒動を仕組んだ者がいることも意外だが、その動機も陰険で驚く。神父さんも有名人になってしまったから・・・

「天の矢」
 "コプトの杯" という珍品を持つ資産家が殺されるという事件が続発する。現在の所有者は実業家のマートン。しかし彼も、室内で矢に射抜かれて殺されてしまう。しかし現場の周囲には矢を放てる場所が存在しなかった・・・
 これも現代ミステリではすぐにネタが分かってしまうが、発表されたのは100年前だからねぇ。

「犬のお告げ」
 ドルース大佐が殺される。現場は自宅の庭の東屋で、死因は背後から鋭利な刃物で刺されたこと。しかし現場周囲で凶器が発見されていない。
 密室ものというよりも凶器の隠蔽のほうがメイン。タイトル通り、ワンちゃんが全編にわたって大活躍(笑)。

「ムーン・クレサントの奇跡」
 ムーン・クレサントとは、現場になった高層ビルの名前。ウォレン・ウィンドがその14階のオフィスから衆人環視の中にもかかわらず姿を消し、やがてビルから400m離れた場所で首吊り死体となって発見される。
 古典的なトリックなんだけど、まさに本書はその古典だった(笑)。

「金の十字架の呪い」
 サセックス海岸の教会の地下に古い墓地が発見された。そこへ見学に入り込んだグループの1人が事故死してしまう。他の者たちが呪いによるものではないかと騒ぐうちに、教会の牧師が自殺してしまう。
 オカルト的というか伝奇的な雰囲気の中で、ブラウン神父は現実的な解釈を以て隠された犯罪を暴いていく。

「翼ある剣」
 資産家エールマーが亡くなり、3人の実子が財産を相続した。養子のストレークは相続から外されてしまい、その怒りから実子のうち2人までを殺害してしまう。最後に残ったアーノルドは、襲ってきたストレークを返り討ちにすることに成功するのだが・・・
 これも白魔術・黒魔術とかのオカルト的な味付けがされているが、ブラウン神父は意外かつ合理的な真相を引き出してみせる。

「ダーナウェイ家の呪い」
 七代ごとに当主に悲劇が訪れるというダーナウェイ家。オーストラリアから帰国して来た次期当主がその七代目に当たるが、密室状態のアトリエの中で死体となって発見される。
 ラブ・ストーリーとしては楽しめるけど、ミステリとしてはこのオチじゃ反則だろう(笑)。

「ギデオン・ワイズの亡霊」
 3人の富豪が、遠く離れた別々の場所で同時刻に殺された。1人目スタインは自宅庭に建設中の浴室で、2人目ギャラップは自宅の門番小屋脇の茂みの中で、3人目ワイズは別荘近くの崖から海に突き落とされて。
 しかし、詩人で革命家のホーンがワイズの亡霊を見たと言い出す。しかも、ワイズを殺したのは自分なのだとも・・・
 これはなかなか意外な真相。"構図の逆転" とはこのことか。



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