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BUG 広域警察極秘捜査班 [読書・冒険/サスペンス]


BUG 広域警察極秘捜査班(新潮文庫nex)

BUG 広域警察極秘捜査班(新潮文庫nex)

  • 作者: 福田和代
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/06/07
評価:★★★

 水城陸(みずき・りく)は10歳で不登校となり、ひきこもり生活に。以来、コンピュータとネットに耽溺し、16歳のときには天才的なハッカー技術を身につけていた。

 しかし、560人が乗ったサミット航空172便が墜落し、全員死亡の大惨事が起こって彼の運命は変わる。航空会社のシステムに侵入し、ウイルスを仕込んだ容疑で逮捕されてしまったのだ。

 水城は無実を訴えたが、最高裁で死刑が確定する。官僚だった父は自殺し、収監されたまま26歳を迎えた彼にも刑の執行が迫る。
 そんなとき、水城の前に「環太平洋連合広域捜査官」を名乗る男が現れ、助命と引き換えに広域警察への参加を迫ってきた。高度なハッキング能力を買われたのだ。

 水城は死刑が執行されたと発表され、公的に ”死” が確定した。
 彼は新たに ”沖田シュウ” という名を与えられ、国家を超えて捜査する権限を持つ広域警察の捜査官となった。タイトルの ”BUG” とは、広域警察の通称だ。

 死刑は免れたものの、徹底的に自由が制限された生活が待っていた。足にはGPS装置がつけられ、単独での外出は許されない。施設から脱走しようにも、強固なセキュリティがそれを阻む。
 しかし沖田(水城)はそれに甘んじる。いつの日か、墜落事件の真相を暴き、自らの身の潔白を証明することを誓いつつ・・・

 インド系米国人の老数学者チャンドラ・ブティア博士の身辺調査およびハッキングを命じられた沖田は、彼が10年前の172便事故の搭乗者名簿に名があったことを知る。博士は172便には実際には乗っていなかったのだが、事故によって死亡したものと思われ、なぜかこの10年間、姿を隠していたのだ。
 博士は、事故について何か知っているのではないか・・・

 沖田は博士の調査任務と並行して、博士と接触することを画策し始めるのだが、もちろん上司や同僚に知られてはならない。そこでハッキング技術を駆使していくのだが・・・


 警察小説あるいはサスペンス小説に属する話なのだけど、沖田は主人公の典型からはかなり逸脱している。
 たいていは肉体的にタフで、荒事もこなすキャラが主役になるものだが、本書の沖田くんは10年間も拘置所暮らしだったからね。”出所” 後、訓練はしたのだろうが、敵であれ味方であれ、肉弾戦の場面では ”その道のプロ” には全くかなわない。このジャンルでは珍しい ”頭脳労働” 系の主人公だ。

 物語の進行とともに、沖田の父が自殺ではなく何者かによって殺害された疑いが浮上する。さらにブティア博士が関わっていた仮想通貨Lex(レークス)を巡る暗闘と、この2つのストーリーラインの中で、”頭脳労働” 系の沖田君の奮闘が描かれていくわけだが・・・

 沖田の父の死の真相は本書で明らかになるが、172便墜落事故の真相と仮想通貨Lexを巡る国家間の陰謀については次巻『暗号通貨クライシス BUG 広域警察極秘捜査班』に引き継がれる。こちらも読了しているので近々記事をアップする予定。



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