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半鐘の怪 半七捕物帳 ミステリ傑作選 [読書・ミステリ]



半鐘の怪: 半七捕物帳ミステリ傑作選 (創元推理文庫 M お 15-1)

半鐘の怪: 半七捕物帳ミステリ傑作選 (創元推理文庫 M お 15-1)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/02/10
  • メディア: 文庫

評価:★★☆

 主人公の半七は、幕末に活躍した岡っ引きだ。
 維新を迎え、明治も中期となり、70代を迎えた半七が、新聞記者相手に若き日の事件を語り出す・・・というパターン。

 第1作の発表が1917年(大正6年)のこと。当時からしたら ”明治の中頃” というのも、そう遠い昔ではなかったのだろう。
 1937年まで全68編が書かれ、その中から選んだ18編が収録されている。


「お文(おふみ)の魂」
 旗本の屋敷に幽霊が出る。主の妻は離縁させてくれと騒ぐのだが。
「勘平の死」
 素人芝居の最中、小道具の刃物がすり替えられて死人が出る。
「お化(おばけ)師匠」
 姪をいじめ殺し、”お化師匠” と呼ばれた踊りの師匠が殺される。
「半鐘の怪」
 火事もないのに半鐘が鳴り、幽霊の仕業のような怪異が続発する。
「奥女中」
 茶屋の娘が武家屋敷に拉致されるが、なぜか美しく着飾ることに。
「朝顔屋敷」
 学問の試験 ”素読吟味” を受けるため会場へ向かう旗本の嫡男が姿を消す。
「猫騒動」
 猫を数多く飼っていて、近所迷惑になっていた女が殺される。
「鷹のゆくえ」
 品川の女郎屋に上がった鷹匠が、将軍家飼育の鷹を逃がしてしまう。
「津の国(つのくに)屋」
 実の娘が生まれたので養女を追い出した商家に、怪異と殺人が起こる。
「向島の寮」
 破格の条件で商家の寮へ奉公にきた娘。しかしそこにある土蔵には。
「蝶合戦」
 評判の女祈祷師が姿を消し、首のない死体が発見されるが。
「筆屋の娘」
 美人姉妹が看板娘となって繁盛していた筆屋だが、姉が毒殺される。
「あま酒売」
 夕刻に現れて甘酒を売る謎の老婆。近くによると病を被るという噂が。
「冬の金魚」
 俳諧の師匠のもとへ金魚売りの仲介依頼が。その半月後、師匠が殺される。
「三つの声」
 鋳掛(いかけ)屋の庄五郎が川崎大師へ出かけると言ってそのまま失踪する。
「かむろ蛇」
 早桶屋の伊太郎の死から続発する奇怪な事件は ”かむろ蛇” の祟りなのか。
「幽霊の観世物(みせもの)」
 見世物小屋の幽霊屋敷で女の変死体が。幽霊に驚いて心臓が止まったのか。
「二人(ににん)女房」
 呉服屋の息子が女郎と心中。翌年、同じ宿場で酒屋の女房が失踪する。


 読んでみて思ったのは、まずはバラエティの豊かさ。長屋の住人間の諍いや商家の財産争いといった ”定番” もあるけれど、それ以外のいろんなシチュエーションでの事件が多く語られている。
 次に、ミステリとしての構成の妙。現代から見れば穴もあるけど、当時としては斬新な読み物だったんじゃないかと思う。作者はシャーロック・ホームズの探偵譚の影響を受けてこのシリーズを書き出したと巻末の解説にあるのだけど、こちらもいろいろな犯罪のパターンが用いられている。書かれた時期がかなり古いにも関わらず、あまり古びた感じがしないのも、そのせいかも知れない。


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