SSブログ

剣樹抄 [読書・歴史/時代小説]


剣樹抄 (文春文庫)

剣樹抄 (文春文庫)

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/10/06
評価:★★★

 時代は、徳川家康が江戸に幕府を開いて半世紀経った頃。

 主人公・了助(りょうすけ)は幼い頃、無宿人だった父を旗本奴に殺されてしまう。旗本奴とは、将軍家に仕える青年武士の中で、やさぐれた者たちのこと。現代で言うところのチンピラみたいなものか。

 父の仲間だった三吉に引き取られたが、その三吉も、火災で喪ってしまう。明暦3年(1657年)に江戸の町の大半を灰燼に変えた大火災・「明暦の大火」だ。以後、芥(あくた)を運ぶ仕事をしながら我流で木剣の修行をしている。

 もう一人の主人公は、水戸藩第二代藩主・水戸光圀。
 父・頼綱から隠密組織の立ち上げを命じられた光圀は、親を喪って幕府に保護された子どもたちの中で、特殊な技能を持つ者を選抜し「拾人衆(じゅうにんしゅう)」を結成する。

 みざるの巳助。カメラのような記憶力を持ち、1度見たものは絵として完全に再現することができる。
 いわざるの鳩。1度聞いた相手の声を、完璧に真似ることができる少女。
 きかざるの亀一。並外れた聴力を持ち、遠くの声や会話を聞き、覚えることができる。

 「拾人衆」の設立目的は、火付け(放火犯)の摘発。明暦の大火をはじめ、火事は江戸にとって極めて重大な脅威であり、放火は重罪なのだ。

 火付けの容疑者・秋山官兵衛を追っていた光圀だったが、その官兵衛が一人の少年に倒されてしまう現場に出くわす。その少年こそ了助だった。

 光圀によってスカウトされた了助は「拾人衆」のメンバーとなり、様々な事件に関わっていく、というのが本書のあらまし。
 本作はシリーズ化されていて、次巻以降も刊行中だ。


 巻末の解説では、光圀と「拾人衆」を ”明智小五郎と少年探偵団” になぞらえているが、あまりそんな感じはしないかな。なんといっても「拾人衆」は子どもの集団なので、凶悪犯と対峙する事件解決の場に至ると、どうしても大人たちの陰に隠れがちになってしまう。

 もっとも、二十面相みたいにシリーズ共通の敵も登場するので、あながち間違いでもないかも知れないが。

 この作品に登場する光圀は、”ある秘密” を抱えていて、これがシリーズの今後の展開にも関わってきそうだ。
 了助に思いを寄せていそうなお鳩ちゃんも可愛い。このあたりの進展も楽しみだ。


 作者には、10年前に『光圀伝』という長編があるのだけど、そちらの光圀像ともほぼ同じキャラとして描かれているので、そちらからのスピンオフ、あるいは外伝的位置づけとしても楽しむことができる。

 個人的に嬉しかったのは、光圀の正室・泰姫と再会できたこと。『光圀伝』の中でもピカイチに魅力的かつ印象に残るキャラだったので、彼女が登場したシーンでは思わず涙が出てしまったよ(笑)。
 『光圀伝』の方も、未読の方がいたら、ぜひ一読をお勧めする。


 本作はNHKでドラマ化されてる。私は観てないんだけど(おいおい)。
 若き光圀を演じるのは山本耕史。大河ドラマにも出てるね。堀北真希の旦那でもある。泰姫役は松本穂香。『光圀伝』では美人薄命キャラだったけど、こちらはどんなふうに演じてるんでしょうね。
 宿敵となる錦氷ノ介は加藤シゲアキ、水戸家家臣役で西村まさ彦、他にも舘ひろし、石坂浩二、北乃きい、中島朋子など。
 ちなみに了助とお鳩ちゃんはそれぞれ13歳と11歳の子役の方が演じてるみたい。



nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント