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人間動物園 [読書・ミステリ]

人間動物園<新装版> (双葉文庫)

人間動物園<新装版> (双葉文庫)

  • 作者: 連城 三紀彦
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2021/05/13
  • メディア: 文庫

評価:★★★★

埼玉県全域に大雪注意報が発令された日、
西北部の県境に近い笠井市で誘拐事件が発生した。

被害者は梅原ユキ、4歳の女児だ。通報者は母親の芳江。
犯人からの要求は1億円。一般人に払える額ではないが
芳江の別れた夫・家野輝一郎(いえの・きいちろう)は
政治家・家野大造の三男だった。
かつては総理大臣候補にも名が挙がり、そして今は
1億円の贈収賄事件の渦中にある元閣僚だ。

しかし、警察は芳江に住む家に入り込めなかった。
犯人の手によって、既に10個の盗聴器が仕掛けられていたのだ。

仕方なく、警察は隣家の窓から芳江と手紙のやりとりをして
情報収集および犯人からの電話に対する指示をする羽目になる。

笠井警察署の刑事、発田(はつだ)と朝井は被害者宅の隣家で
芳江と連絡を取りつつ、犯人からの連絡を待つ。

関東新聞社の記者・大任(だいとう)は、
被害者宅の向かいの民家に潜んで誘拐事件の特ダネを狙う。

ユキの父・輝一郎は身代金の金策のために大造と会うが
親族たちは金を出すかどうかで紛糾する・・・

物語は主にこの3つのラインで語られていく。

読んでいるといろんな想像が湧く。

初めからユキの祖父・大造から金を出させるのが目的、
というのはすぐに見当がつくが、では誰が?

狂言誘拐だとしたら、企むのは芳江か輝一郎になるだろう、
というところまでは考えが及ぶが、本書の展開はそのさらに上を行く。

身代金の受け渡しの場面では不可解な事態が発生し、
終盤に至っては事件の様相が一変するような事実が判明していく。
しかも、それは一度では済まない。
”二転三転” とはまさにこのことだろう。

ラスト近くでは、誘拐事件を起こすに至った犯人の心情も語られる。
そして最後の6行。なんとも意表を突いたラストシーンを迎える。

ネタバレになるので詳しくはかけないが
同じ作者の某作品の冒頭に似た場面がある。
作者はこういうシチュエーションが好きなのかも知れない。


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