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水晶宮の死神 [読書・ファンタジー]

水晶宮の死神 (創元推理文庫 F た 1-4 VICTORIAN HORROR ADV)

水晶宮の死神 (創元推理文庫 F た 1-4 VICTORIAN HORROR ADV)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/07/21
  • メディア: 文庫

評価:★★★

19世紀半ば、ヴィクトリア朝の英国を舞台にして
エドモントとメープルの叔父姪コンビが遭遇した
怪奇な事件と冒険を描く、その第3作にして最終作。

wikiによると、タイトルにある「水晶宮」とは
1951年にロンドンで開かれた第1回万国博覧会の会場として作られた建物。
鉄骨とガラスで作られ、563m×124mの大きさだった。

万博終了後には解体されたが、1954年にはロンドン南郊のシデナムで
コンサートホール、植物園、博物館、美術館、催事場などが入居した
複合施設としてスケールが拡大されて再建された。

本書の冒頭、エドモントとメープルの主人公二人組が出かけていくのは
この再建後の水晶宮のほうだ。

毎日4万人もの観客を集めていた水晶宮に二人が到着した直後、
袋詰めの首無し死体が降ってくるという事態が勃発する。

 wikiに載ってる写真を見ると、建て替え後の水晶宮は
 少なくとも6階建て以上はありそうな立派な造りをしてる。

しかも首無し死体はその後も数が増え続ける。
観客はパニックに陥るが、折しも天候が急変し
水晶宮周辺は暴風雨に襲われてしまい、外部への脱出もできなくなる。

そして現れるのが今回の悪役、ガラスの仮面に黒マントの謎の人物。
常人を超える身体能力を持つこの怪人とエドモントが
繰り広げる大立ち回りが、前半の山場となる。

後半では怪人の操る怪物どもが登場し、
ロンドン近郊の地下道を舞台としたホラーな冒険物語になる。

歴史上の実在人物が顔を見せるのがこのシリーズの特徴だが、
今回のメインゲストはチャールズ・ラトウィッジ・ドジスン、
文学的にはルイス・キャロルとして知られる人物だ。
チャールズ・ディケンズも出てきて、結局彼はこの3作とも皆勤かな。

そして今回は、架空の有名人も登場する。
その名もジェームズ・モリアーティという少年。
水晶宮に閉じ込められた観客の一人として登場するのだけど
13歳にもかかわらず沈着冷静で、言動の端々に非凡さが垣間見える。

エドモントは彼を評して
「容姿や体格は15,6歳、頭脳はおそらく20歳以上」と記している。
これはもう、あの ”モリアーティ” ですよねぇ・・・

”ヴィクトリア朝怪奇冒険譚三部作” と銘打たれたシリーズは
これで完結。各巻にストーリーのつながりはほとんどないけど
順番に読んだ方がキャラへの愛着は湧くだろうな。

本書のラストシーンは、81歳になったエドモントが登場し
メープルが67歳になったことが語られてる。
彼女の性格からして、さぞ波瀾万丈の人生を送ったのだろう。
短篇でもいいから、そのあたりのエピソードの一つ二つでも
読んでみたいとは思うのだが、作者はたぶん書かないだろうなぁ・・・
『銀英伝』でもそうだったし。


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