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昭和少女探偵團 [読書・ミステリ]

昭和少女探偵團(新潮文庫nex)

昭和少女探偵團(新潮文庫nex)

  • 作者: 彩藤アザミ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/12/07

評価:★★★

時代は昭和6年。
父親は放蕩者だが、母親は売れっ子の流行作家という一家に生まれ、
自由な校風が自慢の私立聖桐(せいとう)高等女学校に通う
14歳の花村茜が主人公兼語り手を務める。

「第一話 少女探偵ごきげんよう」
ある日、音楽の授業から教室に帰ってきたとき、
茜は机の中に差出人不明の手紙を発見するが
怪文書を受け取ったのは茜だけではなかった。
窓際の席に座っていた生徒みんなの机に入っていたのだ。
ただ一人、茜の友人・寒河江加寿子を除いて・・・
謎を解いたのは、夏我目潮(なつがめ・うしお)という女生徒。
明かされた真相は、この時代の女学校ならではのものだった。

潮の推理力に惚れ込んだ茜は、友人の丸川環とともに
”少女探偵團” を結成する。

「第二話 ドッペルゲンゲルスタイルブック~~鈴原ミュゲのお洒落手帖」
茜の父が、近くの商店街で茜の ”ドッペルゲンゲル” を見たという。
笑い飛ばした茜だったが、商店街へ買い物へ出ると
まさに自分に瓜二つの少女を目撃してしまう。
同じ髪型、同じ買い物籠、同じ花柄のワンピース。
驚き怯える茜だったが、そこへやってきた潮と環と共に、
”影” の正体を探りだすことに・・・
シリーズのサブレギュラーとなる鬼頭刑事が初登場する。

「第三話 満月を打ち落とした男・前」
「第四話 満月を打ち落とした男・後」
”ドッペルゲンゲル事件” を解決した少女探偵團だったが、
それが新聞に載ってしまい、世間からの注目を集めてしまう。
そんな矢先、灰田と名乗る男が茜に接近してきた。
潮は一目で灰田の怪しさを見抜き、遁走した灰田を追うが
彼が逃げ込んだのは見留(みとめ)院子爵の屋敷だった。
子爵家令嬢・紫(ゆかり)は、安元脳病院の院長の次男・庸二との
縁談が進んでいたが、突然白紙撤回となり、それ以後、
庸二との連絡もつかなくなってしまったという。
少女探偵團は、紫の依頼を受けて安元脳病院へ潜入することに・・・

昭和6年といえば満州事変が起こった年。
本作の背景にも戦争の色が垣間見える。
特に「第三話」「第四話」では、事件と軍の関わりが明らかになって
彼女たちの将来も心配になってくる。

両親の影響で、比較的自由で進歩的な価値観に育っている茜さん。
実は、実在する某有名人と血縁関係にある潮さん。
科学的素養と手先の器用さに恵まれた、元祖リケジョの環さん。
皆さんキャラが立っていて、読んでいて楽しいのだけど、
どうしても数年後の彼女らのことを考えてしまう。

昭和6年で14歳ということは、真珠湾攻撃の起こった16年には24歳。
この時代なら既に結婚しているだろうし、夫はおそらく出征するだろう。
終戦の年には28歳となっているわけで・・・

本書の中では、来るべき未来など知るよしもなく
元気にはしゃぎ回ってるお転婆娘さんたちなんだが、
オジさんは心配になってしまったよ。


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