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アルモニカ・ディアボリカ [読書・ミステリ]

アルモニカ・ディアボリカ (ハヤカワ文庫JA)

アルモニカ・ディアボリカ (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 皆川 博子
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/01/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

18世紀の英国を舞台に、解剖学を確立せんとする外科医ダニエル、
そしてその弟子たちが活躍する、時代ミステリ。

前作『開かせていただき光栄です』に引き続く第2弾だが
内容的にはほとんど「続編」と言っていい。
ミステリとしては本作の内容で独立しているけど
登場するキャラたちの物語は前作の結末をそっくり引き継いでいるし
それぞれの ”キャラの行く末” まで描かれているからだ。

逆に言えば、前作から登場しているキャラたちについて、
何も知らずに読んでしまうと、面白さが半減してしまう可能性もある。
であるから、前作を未読の方は、
是非そちらを読んでから本書にかかることをオススメする。
そうすれば、本書の魅力を100%味わうことができると思う。

物語は前作から5年後に始まる。ダニエルの5人の弟子のうち、
エドとナイジェルは出奔してしまって行方不明となっている。
アル、ベン、クラレンスの3人はフィールディング治安判事のもと
犯罪摘発情報新聞『ヒュー・アンド・クライ』の編集発行を始めていた。

そこへ、身元不明の死体についての情報提供を求める広告の依頼が入る。
依頼者は逓信大臣ダッシュウッド卿。
彼の領地にある採石場から死体が発見され、その胸には
〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニア・ディアボリカ〉という
謎の言葉が記されていたのだという。

ダニエルと元弟子の3人は、言葉の意味を求めて行動を開始するが
やがて〈ベツレヘム〉とは、ロンドンにある精神病院〈ベドラム〉の
別名ではないか、という情報を掴む。

物語は、死体の謎を探索する元弟子たちの行動を追うパート、
ガラス職人の親方の娘エスターと、職人アンディのパート、
〈ベドラム〉に収容されている患者たちの生活を描くパートと
この3つが並行して語られていく。

 特に、〈ベドラム〉内での患者の扱いがひどい。
 前作では刑務所内の無法地帯ぶりが描かれていたが
 この時代の精神病院というのもまたすさまじい世界だ。

さらにその中では、元弟子ナイジェルの過去までも
明らかになっていくのだが、なにぶん登場人物が多く
時系列も錯綜するので、いささか見通しが悪いのだが
最終的にはきれいにパズルのピースがはまって全体像が明らかになる。

600ページ近い分量を駆使して、膨大な伏線を回収していくさまは
やはりスゴい。作者である皆川博子さん、御年83歳での発表である。
まさに年季の入った練達の職人技といえるだろう。

探偵役は前作に引き続き盲目の治安判事フィールディング。
彼の姪で助手を務めるアン=シャーリー・モア嬢も健在。

 本書の時点で27歳とあるので、当時としては ”嫁き遅れ” な年齢?
 なのかな。15歳の時から縁談が舞い込んでくるくらいだから
 才色兼備なのだろうけど、なかなか縁がつながらないんだよねえ。
 でも終盤には、ひょっとしたら・・・という要素もある。

このシリーズ、けっこう各キャラたちの着地点まで描かれているので
3作目は無いかも知れないんだけど、
短篇でもいいからアン嬢のその後が知りたいなあ・・・

あと、タイトルにある「アルモニカ」は、楽器の名前で
wikiにも載ってるんだけど、本書の中に出てくる「アルモニカ」は
むしろ ”グラス・ハープ” のことじゃないのかなあ。

アルモニカもグラス・ハープもYouTubeに動画が挙がってる。
特にグラス・ハープの方は、一見の価値があると思う。


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mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-27 10:14) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-27 10:14) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-27 10:14) 

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