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機龍警察 暗黒市場 上下 [読書・SF]

機龍警察 暗黒市場 上 (ハヤカワ文庫JA)

機龍警察 暗黒市場 上 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 月村 了衛
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2020/12/03
  • メディア: 文庫
機龍警察 暗黒市場 下 (ハヤカワ文庫JA)

機龍警察 暗黒市場 下 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 月村 了衛
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2020/12/03
  • メディア: 文庫
評価:★★★★☆

大量破壊兵器が衰退し、テロが蔓延する近未来。
それに伴い発達した人型近接戦闘兵器・機甲兵装。

 機甲兵装のイメージは往年のTVアニメ「装甲騎兵ボトムズ」に
 登場する人型機動兵器AT(Armored Trooper)に近いだろう。

機甲兵装を使った犯罪に対抗するため、
警視庁特捜部は最新鋭の機甲兵装〈龍機兵〉を3機導入、
その搭乗員として3人の組織外人員と契約する。

日本人傭兵・姿(すがた)俊之、元テロリストのライザ・ラードナー、
そしてモスクワ民警出身のユーリ・オズノフだ。

閉鎖的、保守的な警察組織はそんな〈龍機兵〉に対して
強烈な拒否反応を示し、特捜部は孤立を強いられながらも
凶悪な事件に対峙していた。

第1作『機龍警察』では姿、第2作『自爆条項』ではライザに
スポットが当てられ、それぞれの過去も語られてきた。

第3作である本作ではいよいよユーリ・オズノフが主役となるのだが、
「第一章 契約破棄」では、なんと彼は
警視庁との契約が解除された状況で登場する。当然ながら
〈龍機兵〉の搭乗員ではなくなり、”警部” の身分も喪失している。

ユーリはロシア人のアルセーニー・ゾロトフと接触する。
彼は日本に進出してきたロシアン・マフィアの一人で
ユーリとは様々な因縁で結ばれた ”幼馴染み” であった。

世界中からバイヤーが集まる〈ルイナク〉と呼ばれる武器密売市場が
近々、日本のどこかで開かれるという。
それを仕切る《支配人》は、名前・国籍・経歴すべてが謎の人物だ。
新たな仲間としてゾロトフに受け入れられたユーリは彼と組み、
武器のバイヤーとして〈ルイナク〉へ参加することになる。

続く「第二章 最も痩せた犬達」では、ユーリの過去が語られる。

警察官の父をもつ11歳のユーリ少年は、転校生のゾロトフと出合う。
彼は ”ヴォル” と呼ばれるならず者の息子だった。
二人は対立と反発をくり返しながらも、お互いを少しずつ知っていくが
ある ”決定的な出来事” によってゾロトフは姿を消してしまう。

やがて成人したユーリは、父の背を追うように警官となり
22歳でモスクワ民警の刑事に任命された。

ロシアの警察内部には汚職と賄賂が蔓延していたが
ユーリが配属された91分署の刑事達は、潔癖に警察官であろうとする
矜持をもつ者たちで、『最も痩せた犬達』と呼ばれていた。

かつてユーリの父の部下だったという班長ダムチェンコは
尊敬できる上司であり、彼の指揮する6人の信頼できる同僚たちと共に
刑事として成長していくユーリ。
そしてダムチェンコの妹・リーリャとは将来を誓う仲になっていく。

しかし順風満帆かと思われたユーリの警察官人生は
最悪の形で断ち切られてしまうことになる。

仲間も恋人も失い、謂れなき汚名まで着せられ、
警察からも追われる身となったユーリはモスクワを脱出、
やがて極東の地へ逃れて裏社会へと身を沈めていく・・・

この「第二章」は文庫で200ページもあるのだけど
ユーリが陥れられた陰謀、そしてその背後で何が起こっていたのかは
すべて「第三章」で明かされていく。

そして「第三章 悪徳の市」。時間軸は再び現在へ。

栃木県で起こった交番襲撃事件をきっかけに
特捜部は日本で開かれる〈ルイナク〉の手がかりを掴む。
さらに今回の ”市場” では、〈龍機兵〉に匹敵する性能を持つ
新型機甲兵装が取引されるという。

ブラックマーケットの壊滅と新型機の市場流出を阻止するべく
特捜部は全力を挙げるのだが・・・

前2作で、警察上層部や日本政府内には、犯罪組織とつながる
巨大なネットワークが存在することが示唆されている。
そしてそれが特捜部にとっての真の〈敵〉であることも。

今作でも、〈ルイナク〉の所在地を突き止めた特捜部が
地元警察とともに強制捜査に突入しようとするが、
それを妨害すべく〈敵〉が介入してくる。

一方、〈ルイナク〉に参加したユーリにも生命の危機が迫る。

次々に襲ってくる危機を乗り越え、満身創痍になっていくユーリ。
しかし、脳裏に蘇るのは誇り高き警察官だった父の姿、
若き日の自分を鍛えてくれた上司や同僚達の言葉、そして
闇の底を這うように生きてきても、失わなかった警官としての覚悟。

このあたり、涙で文字が滲んでしまって読み続けるのがつらい。

ユーリが ”伝説の黒い魔犬” の名を持つ
〈龍機兵〉『バーゲスト』を駆って、
最後の敵に挑むクライマックスまで、ページを繰る手が止まらない。

ユーリの ”魂の復権”、警官としての再生を描く警察小説なのだけど、
機甲兵装による戦闘シーンにも十二分にページが充てられていて、
SFファンにも満足のいく作品だろう。

このシリーズ、なかなか文庫化されないんだよねぇ。
本書も、単行本刊行から8年もかかってる。
たぶん、それくらい売れてるんだろうなぁ・・・

このぶんでは次作『未亡旅団』の文庫化まで2~3年待たされそうだ。
私は滅多に単行本を買わないのだけど(数年に1回くらい、かなぁ)
このシリーズは買ってもいいかなぁ、って思ってしまう。


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mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-02-17 23:10) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-02-17 23:10) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-02-17 23:11) 

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