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ルピナス探偵団の憂愁 [読書・ミステリ]

ルピナス探偵団の憂愁

ルピナス探偵団の憂愁

  • 作者: 津原 泰水
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/07/14
  • メディア: Kindle版
評価:★★★

私立ルピナス学園・高等部で同級生だった
4人組を主人公とするミステリシリーズ、その第2巻。

本書は4話構成なのだけど、変わっているのは
時間軸が逆順になっていること。

社会人(25歳) → 大学3年生(21歳) → 大学2年生(20歳)
→ 高等部の卒業式(18歳) と、時代を遡って4人の姿が描かれていく。

25歳となった彼らは、それぞれの道に進んでいる。

吾魚彩子(あうお・さいこ)は語り手も兼任している。
かつて小説の新人賞に佳作入選したものの、
それ以後は鳴かず飛ばずの小説家志望で、現在はフリーター。

祀島龍彦(しじま・たつひこ)は彩子が密かに思いを寄せる相手。
古生物学を専攻する彼は、彩子と同じ大学を卒業した後はアメリカに渡り
博物館の学芸員になっている。本シリーズでの探偵役でもある。

桐江泉(きりえ・いずみ)は理系の大学を出たが出版社に就職、
彩子の本を出版することを目指している。

京野摩耶(きょうの・まや)はおっとりした美人。
短大を卒業後、資産家の御曹司と結婚し、
姓も日影(ひかげ)となったのだが・・・

「第一話 百合の木陰」
摩耶が突然の病で早世してしまい、彩子たちは葬儀に参列する。
しかし、日影家の人々からは摩耶の評判がすこぶる悪いようだ。
その原因は、摩耶が夫に働きかけて、婚家の財産である土地の一部を
地元の市に寄付してしまったかららしい。
しかもその土地には、曲がりくねった道までつくって。
摩耶の育った家庭の事情を知った龍彦は、彼女の真意を明らかにする。

「第二話 犬には歓迎されざる」
彩子と龍彦は、2人の通っている大学の教授・石神井玲(ほまれ)から
自宅に招かれることになった。
彼の家の敷地の中には、金網で囲われた別棟が建ち、
そこには小説家の蒲郡要(がまごおり・かなめ)が住んでいた。
2人が教授の家を出た直後、別棟に何者かが侵入し
蒲郡氏が重傷を負ってしまうが・・・
犯人の動機がかなり意外、というか珍しい?

「第三話 初めての密室」
桐江が設定した合コンに参加した彩子は、
そこで日野慶太という学生と知り合う。
彼こそ、4年前に起こった密室殺人事件の犯人の息子だった。
しかも、非公式ながら彩子はその事件の解決に関わっていた。
そのことをきっかけに、4年前の事件の真実が明らかになっていく。

「第四話 慈悲の花園」
彩子たちが在籍していたルピナス学園は、かつて経営難に陥り、
他の学校法人の傘下に入った。その結果、
新たな理事長・多々良翠(たたら・みどり)を迎え入れた。
その理事長が学園内の動物小屋の中で死体となって発見される。
しかもそれは彩子たちの卒業式の前の晩だった。
当年ながら式は延期となってしまうが、龍彦をはじめとする4人組は
真相究明のために、ある ”企み” を実行する・・・
ラストの卒業シーンには、ちょっと感動。

ミステリとしてはいまひとつかなぁとも思うけど
登場人物のキャラ立ちがはっきりしていて
青春ものとしては面白く読める。

第1話で摩耶が亡くなっていることが語られているので、
過去編である第2話以降で彼女が出てくると、切ない思いに駆られる。

巻末の解説によると、作者はこのシリーズをもう1冊分書く予定だという。
それは今まで発表された作品の時間軸の空隙を埋めるものになるのか、
「百合の木陰」以降の物語になるのかは不明なのだけど
私としては、彩子の小説家デビューが実現するのかどうか知りたいし、
彼女と龍彦の仲も決着させてほしいなあ。


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コメント 4

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-19 01:25) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-19 01:25) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-19 01:26) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-19 01:26) 

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