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あなたに謎と幸福を ハートフル・ミステリー傑作選 [読書・ミステリ]

あなたに謎と幸福を ハートフル・ミステリー傑作選 (PHP文芸文庫)

あなたに謎と幸福を ハートフル・ミステリー傑作選 (PHP文芸文庫)

  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2019/07/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★

同時発売で「イヤミス傑作選」なるものも刊行されていたのだけど
購入したのはこちらだけ。

もともと ”後味の悪い話” というのが好きではなかったのだけど
トシを取るにつれてますます苦手になってきたようで
「イヤミス-」のほうには全く食指が動かなかったよ。

「割りきれないチョコレート」近藤史恵
語り手の高築(たかつき)は小さなレストランで働いている。
ある日、店を訪れた客がデザートのショコラの味を猛烈に非難した。
その男は人気の新人ショコラティエ・鶴岡だった。
彼の店の詰め合わせセットに入るチョコレートの数は
2個、3個、5個、7個、11個、13個、17個・・・
なぜかみな ”素数” なのだった・・・
後半になると鶴岡の家庭事情、そして彼が
この ”素数” にこめた思いも明らかに。
これはなかなか感動的。

「鏡の国のアリス」加納朋子
探偵事務所を営む仁木順平は、息子の航平に呼び出される。
航平は白川由理亜(ゆりあ)という女性と結婚を考えているという。
しかし彼女は、航平が以前つき合っていた田中明子という女性から
つきまとわれていて、さまざまな嫌がらせを受けていた。
航平と別れたあと、由理亜と会った順平は
彼女を自分のマンションで保護することになったのだが・・・
たぶんこうなんだろう・・・と思わせてさらにひとひねりふたひねり。
流石です。そして、航平くんはたいしたものです。

「次の日」矢崎在美
作者は「ぶたぶた」というシリーズで有名なのだが、
これまで一度も読んだことがない。これが「初ぶたぶた」になる(笑)。
借金をつくって逃げた直之は、7年ぶりに妻子のいる家に帰ってくる。
妻の月子は旅行中で不在だったが、娘の穂波がいた。
散弾銃を手に、娘を人質に立てこもる直之に対して
刑事の山崎は、穂波との身代わりを申し出るのだが・・・
これが「ぶたぶた」なんですねぇ。たしかにユニークな設定ではあるし
独特のユーモアというか持ち味があるのは分かりますが
私には今ひとつ、良さが分かりません。ごめんなさい。

「君の歌」大崎梢
作者の短篇集「忘れ物が届きます」で既読。
高校の卒業式を終えた芳樹は、下校の途中で同級生の高崎に出会う。
高崎は芳樹に対して、なぜか3年前に彼の母校である中学校で起こった
ある "事件" について語り出す。
当時3年生だった女生徒が友人のメモで美術準備室に呼び出され、
そこで何者かに襲われて怪我をしたのだ。
犯人として疑われたのは3人組の不良生徒たち。
彼らは犯行を否定するが、3人組以外に
現場に出入りできる者はいなかったのだ。
密室状態からの犯人消失の謎を "解き明かす" 芳樹なのだが、
そもそも高崎は、なぜ出身中学校の異なる芳樹に対して
この事件の話をしたのか?
最後に明かされる意外な事実もそこに絡んでくる。

「ドルネシアにようこそ」宮部みゆき
時代はバブル景気の全盛時。地方から上京してきた伸司は、
父の営む速記事務所を継ぐため、速記の専門学校に通うかたわら、
六本木の速記事務所でアルバイトをしている。彼の唯一の気晴らしは
駅の伝言板に「ドルネシアで待つ 伸司」と書き込むこと。
ドルネシアは高級ディスコで、もちろん伸司は行ったことがない。
しかしある日、伝言板に返信があった。女性の文字で
「ドルネシアに、あなたはいなかったわね」と書かれていたのだ。
文庫で40ページに満たないページ数ながら
ちょっとした出来事から意外な結末まで読者を引っ張っていく。
真相に絡む事情が分かると、いかにも宮部みゆきらしいとも思う。
バブルな世情に浮かれず、地道に歩んでいる伸司を見ていると
「報われてほしいなあ」としみじみ感じるのだけど、
作者が彼に注ぐ視線も、限りなく優しい。


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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-16 02:00) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-16 02:00) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-16 02:00) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-16 02:01) 

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